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2017年度大学院看護学研究科修了式式辞

学長 福井 次矢
2018年3月12日

修了される皆さん、おめでとうございます。また、修了される皆さんの勉学を支えてこられたご家族や関係者の皆様に心からお祝い申し上げます。
修了生の皆さんのほとんどは、看護学の学士を取得後、臨床現場での実務経験を経て、大学院に入学されています。入学のきっかけは、形としての資格取得のみでなく、身体的な苦痛や心理精神面での苦悩を抱える患者さんなど、多くの人々の支えになり、健康と福利を回復する過程を援助してこられた中で、何らかの疑問点に突き当たり、それを解決したいという思い・希望があったためだと思います。そして、2年間あるいは3年間以上努力された結果、質の高い修士論文や博士論文を完成されました。修了式にあたって、さぞ心軽やかで晴れ晴れとした気持ちでおられることと思います。

そのような研究が一段落ついたことの証の日である本日、皆さんの心軽やかで晴れ晴れとした気持ちの原因は、入学の原因となった疑問点や論文で取り上げたリサーチ・クエスチョンが解決されて、もう研究する必要がなくなり、心の中の重しがなくなったからでしょうか?
答えは、否-No-だと推察いたします。論文が完成し、学位も取得したものの、研究上の疑問点、リサーチ・クエスチョンはさらに増えてきたのではないでしょうか。

研究のテーマは尽きることがありません。一つの研究が終われば、新たな疑問点が沸き上がってきます。高齢者が増え、子供が減り、医療者が扱う疾病の種類や発生頻度が変わり、国の制度としての社会保障自体を変えざるを得ない、そのような社会の変革期に生きている我々が直面する疑問点・問題点は、その数も種類も、増えることはあっても減ることはないでしょう。
私が、修了生の皆さんに、より重視していただきたいことは、皆さん一人ひとりが抱いていた特定の疑問点、リサーチ・クエスチョンに対する回答ではなく、疑問点を解決するための方法論、解決の術(すべ)であります。

19世紀後半以降、英語圏の国々で知られている格言に、「魚を一匹与えれば一日生きられる、魚の釣り方を覚えれば一生生きられる」があります。今後とも、皆さんには、看護や教育の現場での自分自身の行動や周囲で起こっている諸々の事柄などに対して感じる違和感、心の中のちょっとした抵抗感などを大切に、それを言語化し、リサーチ・クエスチョンに変換した上で、文献検索、研究プロトコルの作成、必要な場合は研究費の獲得、データの収集と解析、論文の執筆、科学雑誌への投稿、雑誌の編集者やレビューアーから投げかけられるコメントや質問への対応、そして論文の掲載という一連の活動を続け、世界中の研究者が協力して構築しているエビデンス・知識の倉(Treasure-house)をより大きく、堅固なものとする地球規模の営みに貢献していただくことを期待します。

修了生の皆さんが、それぞれに与えられた場でプロフェッショナルとして活躍され、大きく飛躍されますことを心から祈念いたします。そして、近い将来、機会がありましたら、大学院生として、あるいは教員として、大学に戻り、聖路加国際大学のさらなる発展に貢献していただけますようお願いいたします。また、大学の同窓生として、将来にわたって大学の発展にご協力、ご支援いただければ幸甚に存じます。
改めまして、本日、皆さんが大学院修士課程あるいは博士課程を修了されることに心からお喜び申し上げ、私からの挨拶とさせていただきます。