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2019年度学位記授与 学長 祝辞(2020年3月10日)

学長 福井 次矢

 2020年3月10日、聖路加国際大学の看護学部、看護学研究科修士課程・博士課程、そして公衆衛生学研究科修士課程を卒業あるいは修了される皆さん、おめでとうございます。また、ご両親をはじめとするご家族、ご支援をされてこられた皆さまにも心からお祝い申し上げます。

 本年度の卒業式・修了式は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のため、従来とは全く異なった形で行わざるをえなくなり、私の祝辞もこのように本学のホームページへの掲載のみとなってしまいました。

 昨年末、中国で新たに発生したCOVID-19は全世界に広がり、わが国では未だ感染者数が増加しつつあり、制御される見通しが立っていません。感染した方々に対しては、医師や看護師、コメディカルなど病院スタッフが総力を挙げて治療にあたっていますが、有効な治療法の開発にはもうしばらく時間がかかりますので、とくに重症化した患者さんの苦痛・苦悩に思いを馳せると心が痛みます。

 このCOVID-19がよい例ですが、皆さんが携わる人の健康に関わる仕事には、集中治療室などで日々、目の前の1人ないし数人の患者さんの生死に関わる重大な決定を下し直ちに実行するというタイプのものから、1億人を超える国民の大多数を占める健康な人々がCOVID-19に感染しないようにするにはどうしたらよいのかを考え、話し合いの上決定し、社会という枠組みの中でそれを実践するという保健衛生・公衆衛生の分野まで、実にさまざまであり、しかもそれぞれが同じような重要度を有しています。

 したがって、人の健康に関わる仕事に携わるということは、人の体の中で何が起こっているのか-つまり、臓器や組織、細胞、たんぱく質や電解質、遺伝子などの構造や機能の異常-を知り、人がどのような考えや価値観を持っているのか個別的に配慮し、そして人の集団である社会に関わるさまざまな要因-教育、収入・職業、住居、環境など-の重要性を知る必要があります。

 聖路加国際大学では、わが国でも有数のレベルの高い医療を提供していると評価されている聖路加国際病院ともども、人の身体面、精神・心理面、そして社会的側面について幅広く、かつバランスよく学び研究できる体制が整っています。

 本日卒業・修了する皆さんの興味と進路はさまざまと思いますが、人の身体面と精神・心理面、個人と社会という、しばしば対立的に捉えられるテーマに悩み、直面せざるをえない場面にきっと遭遇することがあることでしょう。そのような時にはいつでも、母校の聖路加に戻ってきてください。卒業生の皆さんが、引き続き聖路加国際大学の教育・研究活動を利用されることは、同時に教育・研究レベルを引き上げることでもあります。

 改めまして、本日、学士として、あるいは修士、博士として、専門職業分野に旅立たれる皆さんに心からお喜び申し上げるとともに、皆さんが自分自身の健康に留意の上、多くの人々、社会のために貴重な営みを続けられるよう祈念し、私からの祝辞といたします。