聖路加国際大学についてUniversity Information

2022年度 入学式祝辞 看護学研究科長(2022年4月2日)

看護学研究科長 麻原きよみ

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。大学院進学に向けて懸命に取り組んでこられたことと思います。その努力に対して敬意を表し、皆さんを心より歓迎いたします。

先日、持続可能な開発目標(SDGs)に反論する書籍があると聞き、やっと読む機会を得ました。17のゴールのうち「気候変動」に焦点が当たっており、例え私たちが個人レベルでエコバックを持ち歩き、電気をこまめに消しても何ら効果がなく、むしろ温暖化対策をしていると思い込むことで目下の危機から目を背け、大きなアクションを起こせなくなっているのではないかとしています。そして著者は、二酸化炭素排出や温暖化による気象変動といった自然環境破壊の本質は、利潤を追求して経済成長を止めない資本主義にあり、それが先進国と開発途上国といった地球規模の格差を助長しているとします。こう考えますと、SDGsのゴールすべてが、そして今の世界紛争の問題も資本主義の社会活動による結果であるように思われます。著者は今こそ資本主義に決別し、経済成長ではなく、むしろ「脱成長」こそが必要であること、そして水や電力、医療や教育などを公共財として民主的に管理する社会を提示します。

私はここで本書の内容の是非を議論するものではありません。私が感じたのは、若き経済思想の哲学者である著者の、吟味され蓄積された知識に基づく本質を見極める力と発想の独自性であり、価値観の大きな変換と現状の社会システムを覆すような内容を果敢に提案していることの力強さです。そして、環境破壊に歯止めがかからない現状にあきらめることなく、考え続けていることです。

皆さんは、人々の健康と幸福をめざす研究者であり上級実践者となります。哲学を含む多様な学問を学び、多角的に知識や技術を探究してほしいと思います。そして、真実を捉えることができ、どんな状況においても人々のためにあきらめることなく、組織や社会に提言できる力を身に着けてほしいと思います。

入学後は、どうぞ思う存分学び、人と出会い、刺激ある生活を楽しんでください。
本日は誠におめでとうございます。