卒業生 寺﨑譲

寺﨑譲

看護師を志したきっかけは、1人の訪問看護師との出会いでした。

厚生労働省 老健局 振興課 (インタビュー当時)  |  2008年卒業

大学時代

看護師を志したきっかけは、受験期に祖母がALSになり、そこで関わっていた訪問看護師との出会いでした。その看護師は、祖母だけでなく家族に対してどのように祖母と接したら良いかアドバイスしてくれ、常に堅い表情であった祖母がその接し方で号泣し感情を表出することができたことを覚えています。その経験が訪問看護師へといざなってくれました。看護を学ぶには国内で歴史があり、訪問看護でも有名な病院が隣接している聖路加看護大学(当時)が一番良いと思い、受験をしました。

授業はグループワークが多かったので、課題内容や自分の意見をまとめ、プレゼンするといったスキルが高まったように思います。また、隣の聖路加国際病院の様々な医師が講義をしてくださった疾病の授業も、今思うととても贅沢な話でした。現在、CNE(Clinical Nurse Educator:注)制度が始まったことで、大学で学ぶことと病院実習とがさらに強く連携することになっていると外から見て思います。病院の看護師は目の前の患者さんに対峙しており、看護学生の実習まで手が回りにくい状況だと思うのですが、この制度が始まってより実践を学べる仕組みになっているのではないかと思います。日本でこのような教育と実践のマッチングができたのは聖路加だからと言ってもいいのではないでしょうか。

キャンパスのある築地は都会ですが下町らしさも残っていて、僕は好きです。学生時代は地域のイベントにボランティアで関わり、「聖路加ホットストリート」という新聞を学生たちで創って、大学と地域のテーマを取り上げ発行していました。「(東京都)中央区福祉まつり」と「白楊祭」(聖路加の学園祭)とのタイアップでスタンプラリーを区の方々と一緒に行ったりもしました。地域のお祭りに参加したり、こどものための地域行事や防災訓練の応急処置の講師なども担うこともあり、これは卒業した今でもできる限り関わっています。

もう少し私の学生生活をご紹介すると、男子の同級生が私を含め3人で、いつも教室の後ろのほうで授業を受けていました。テスト前の一夜漬けも多いほうだったと思います。学年を超えて、また卒業生も一緒に「アリスの家」(聖路加の実習用に作られた付属施設)に行ってみんなで遊んだりもしました。卒業する先輩に50リットルの樽酒を用意し、鏡割りをしたこともありました。4年間があっという間であり、苦楽を共にした同級生はかけがえのない同志です。

そして訪問看護師、国家機関での仕事へ

訪問看護師とは、ご自宅で療養している患者さんやご家族を医療の面だけでなく、生活面も踏まえてサポートする看護師のことです。具体的に言いますと、在宅で療養されている患者さんのご自宅に看護師が訪問し、身体状態は勿論のこと、採血やFoley交換等の処置やおむつ交換、入浴介助等のケアを行っており、病棟で行う看護を自宅で行っています。

病院でのケアと患者さんのご自宅でのケアは異なります。病院では入院された患者さんを、集中的に・様々な専門家や医療機器などを用いて治療しますが、訪問看護師はご自宅にお邪魔しその方の暮らしをサポートしながら、ケアを行います。病院では、医療物品や処置スペースを確保することは簡単ですが、ご自宅では限られた資源の中で工夫して行わなければならないことも大きな違いです。また、患者さんの生活の場で、医療的な助言を行うので、生活とリンクさせて指導をしなければ、現実的なものにはなりません。そして、大きな違いは病院のように周りにいつも専門職がいるわけではないので、看護師がその場で患者さんの状態を深く観察し、状態の原因を考え、今後のことを判断しなければなりません。患者さんは病気や状態が同じであっても生活状況により、アプローチの仕方が変わります。その中で訪問看護師は判断しなければならないので、幅広い知識や技術が求められますが、とてもやりがいのある仕事であると感じています。

2015年4月より官民交流人事ということで2年間、厚生労働省で働いています(インタビュー当時)。国民が医療や介護の保険サービスを受けたいと思った時、そのニーズや課題は様々です。利用者がより良いサービスを受けることや提供者がサービスを提供しやすくするには、どのようにしたら良いか、それに向けた制度や事業をつくることが主な仕事となります。今まで、直接利用者と関わっていましたが、今度は全体を俯瞰して捉える視点が求められます。現場で実践していたから見えていたものもあり、制度を検討していく上では、看護師として大きな役割を果たしているのではないかと感じています。


(注:Clinical Nurse Educator = 医療保健福祉など臨地の場でケアに責任をもち、適切に看護行為を実施できるように看護学生を育成していく教員。聖路加国際大学教員とは別に、聖路加国際病院の中で学生の看護実習の教育などに携わっている)


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