鶴若麻理 教授
生命倫理
医科学技術の進展に伴う新たな倫理的ジレンマ
何がよくて何がよくないのか、どうあることが適切なのか、これらを判断する基準、すなわち生命に関する社会の規範である生命倫理について考えるのが、この科目の目的です。
生命倫理を考えるのは、医療専門家が考えればよいのではありません。私たち一人ひとりにかかわってくることであり、当事者が何を考え、どんな課題があるのかに耳を傾けることが重要です。
この科目では、いのちのはじめから終わりまで、様々なトピックスを取り上げます。たとえば、デザイナーベビーは誰のため? 出生前検査は命の選別か?、安楽死は死ぬ権利なのか? など主として医科学技術の進展に伴う、新たなジレンマについて、私たちがどう向き合うべきか、考えます。
倫理的問題へのアプローチをみなで想像、創造的に考えていく
私たちの欲望は限りないですが、どこまで何をしていいのでしょうか?
科学技術の進展は、私たちに大きな利益をもたらしますが、その一方、新しいジレンマをつきつけます。たとえばクローン技術ひとつをとってしても、私たちはその技術を手に入れる前に、倫理的ガイドラインが整っているわけではありません。
模索し、新たな倫理的問題へのアプローチをみなで想像、創造的に考えていくことが必要になっています。
自分の大切にしていることや価値に向き合うこと
生命倫理を考えるというのは、自分の大切にしていることや価値に向き合うことになります。
たとえば、安楽死について考える時、どのようないのちの終わり方が自分にとってよいのか、何を大切にしたいのかを考えることになります。
自分が大切にしている価値が、必ずしもほかの受講生と同じであるとは限りません。人との対話を通して、いかに人々の価値観が多様であるかに気づかされます。
また時には、どうしても相手の考えを受け入れられないこともあるでしょう。
生命と倫理の問題に対して、自分自身に向き合い、他者の考えに耳を傾け、その違いについて考えたり、相手の新しい考えに気づいたり、そのプロセスのなかで、自分自身が何を大切にしたいのか、しているのかに気づくと思います。
この科目の魅力・面白さ
生命倫理は答えがないといつも言われます。たしかに数学のような答えはありません。ただ1つの答えがないのであって、自分なりに答えを見出すことはできます。倫理を考えるというのは、先生がこういっていたから、法律がこのように書いてあるから、ではなく、自分自身で試行錯誤しながら、なぜそう思うのか、理由は何かをより明確にしながら、自分なりの答えを見出していきます。そのなかで、受講生との対話からその理由づけに新たなバリエーションをみつけたり、新しい発見があることでしょう。
入学前にこの学問を学びたい方へ
木村利人 自分のいのちは自分で決める:生老病死のバイオエシックス=生命倫理(集英社2000年)