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大田えりか教授、西村悦子特任研究員、院生の庄木里奈さん、加藤美佳さんの研究が学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました

2023年10月02日

COVID-19流行下の父親と乳幼児のボンディング(絆)に関連する要因が明らかに ~家族内の良好な関係やパートナーシップが父親の子どもへの絆を高める関連がみられた~

聖路加国際大学の大田えりか教授のもと、西村悦子特任研究員と博士後期課程の庄木里奈氏、DNPコースの加藤美佳氏は、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐、国立感染症研究所の米岡大輔室長、国立国際医療センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センターの大川純代上級研究員と共同で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における父親と乳幼児のボンディング(絆)に関連する要因についての研究結果を発表しました。

研究の目的

COVID-19の流行に伴い人々の生活様式が変化し、父親と乳幼児との関係にも変化が表れていました。しかし、父親と乳幼児のボンディングに影響を与える具体的な要因は明らかにされていませんでした。そのため、本研究は、日本におけるCOVID-19流行時の父親と乳幼児のボンディングに関連する要因を探ることを目的に実施されました。


研究成果の概要

本研究は、全国規模のインターネット調査の男性参加者のうち、男性のパートナーが2020年1月16日以降に出産した1055人を対象に解析を行いました。1055人の参加者は、父親のパートナーの出産回数に基づき、初産婦グループ:521人(49.4%)と経産婦グループ:534人(50.6%)の2つに分けられました。父親と乳幼児のボンディングの評価には、Mother-to-Infant Bonding Scale (MIBS)の日本語版である「赤ちゃんの気持ち質問票」を用いました。
 
COVID-19パンデミック時の父親と子どもの絆に関する要因を分析した結果、以下の点が明らかになりました。

家族関係の良好さ:
家族間の良好な関係やサポート体制が確立されていると、父親の子どもへの愛情が高まる傾向がある。逆に、家族関係が乱れていると、愛情の欠如や父子の絆の不調和を引き起こす可能性が高まる。

パートナーとのコミュニケーション:
パートナーが父親の感情に対して受け入れる態度を示すと、父親の子どもへの愛情が増強される。しかし、侮辱や否定的な反応は、子どもへの愛情の欠如や父子の絆に悪影響を及ぼす可能性がある。

COVID-19パンデミック時のパートナーの在宅勤務:
パートナーが在宅勤務や産休で家にいる時に、父親が子どもの世話に難しさを感じている場合は、初産婦グループでは子どもへの「愛情の欠如」と「怒りと拒絶」に関連がありました。また、経産婦グループでは子どもへの「愛情の欠如」と関連がありました。

COVID-19関連の懸念:
他者の感染予防行動やCOVID-19感染を非難されることへの懸念は、父親の子どもへの感情に影響を及ぼす可能性がある。しかし、COVID-19感染への心配や恐怖は父親と乳幼児のボンディングにマイナスの影響はみられなかった。
 
結論として、家族内の良好な関係やパートナーシップが父親の子どもへの愛情を高める要因として機能する一方で、外部からのプレッシャーやストレス要因はその逆の影響を及ぼす可能性があります。
 
 

発表者のコメント

コロナ禍での在宅勤務では、保育園の休園など多くの家庭で子育ての困難感があったことがわかりました。また、パートナーとの良好なコミュニケーションが子どもの絆へ良い関連がみられましたので、ポジティブな声かけ、受け止めを心がけたいと思いました。女性の社会進出に伴い、父親との共同育児が増えている一方で、父親へのサポートや父親と子どもの関係に関する研究は不足しています。子どもたちの健やかな成長を支えるために、これらの研究を推進したいと考えています。(大田えりか教授、西村悦子特任研究員)


発表論文情報

論文タイトル: Factors associated with father-infant bonding during the COVID-19 pandemic: an internet-based cross-sectional study in Japan
雑誌名:Scientific Reports

著者: Etsuko Nishimura 1), Rina Shoki 1), Mika Kato 1) , Daisuke Yoneoka 2) 3), Sumiyo Okawa 4), Takahiro Tabuchi 5) 3), Erika Ota 1) 3) 
 
1) 聖路加国際大学大学院、看護学研究科、国際看護学
2) 国立感染症研究所、感染症疫学センター
3) 東京財団政策研究所
4) 国立国際医療研究センター、国際医療協力局、グローバルヘルス政策研究センター
5) 大阪国際がんセンターがん対策センター

DOI:https://doi.org/10.1038/s41598-023-40225-2
https://www.nature.com/articles/s41598-023-40225-2


特記事項

本研究は、東京財団政策研究所の研究プログラム「ヘルス・メトリクスを用いた政策インパクトのモニタリングと評価に関する研究」と日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業 [助成番号JP21H04856]の助成を受け実施しました。