WHOCCWHO Collaborating Center for Nursing Development in Primary Health Care

2018年度

看護 2019年3月号 第71巻 第3号

Early Essential Newborn Careのタンザニアへの展開

 2016年10月、WHO看護開発協力センターである聖路加国際大学(以下:本学)において、WHO西太平洋地域事務局(WPRO)が新生児死亡率の高い主な8カ国で展開するEarly Essential Newborn Care(EENC:早期必須新生児ケア)のセミナーをWHO共催の下、開催した(WHO NEWS 2017年1月号掲載)。セミナーの目的は、本学の協定校として共同研究を進めるWHO西太平洋地域外の2カ国の看護大学教員を参加者として招き、各国でのEENCの展開の礎を築くことであった。
 本稿では、セミナーに参加したムヒンビリ健康科学大学(タンザニア)の看護教員2名とともに本学がタンザニアでEENCを展開した経過について報告する。

タンザニア初のEENCセミナーとその後の実践普及

 2017年8月、タンザニアで初めてのEENCセミナーがムヒンビリ健康科学大学と本学共催の下、実現した。前年に開催された本学でのEENCセミナーに参加し事前にWHOWPROのEENC担当技官に指導を受けたタンザニアの看護教員2名と日本人看護師1名の計3名がセミナーのファシリテーターを担った。参加者はタンザニア都市部の国立病院に勤務する看護職および小児科医、看護教員の計11名であった。
 3日間のセミナーの中で、参加者はEENCのモジュール化されたプログラムの基礎となる“First Embrace:すべての新生児と母親を対象とする分娩時および新生児のケア(適切な保温、早期母子接触、適切な臍帯ケア、初回授乳の支援等)”について、普段の分娩時および新生児のケアとエビデンスに基づいたEENCとのギャップを埋めるために、コーチングの手法に基づいて学習および実技練習を行った。その結果、セミナー前後での参加者の知識および実技の向上が確認されている1)。

また、筆者はセミナー直後から約12週間にわたり、セミナーに参加した看護職が勤務する産科病棟でEENCの普及と実践の調査を行った。6週間後、12週間後の各地点における実践評価では、12週間後のEENCの実践率の向上が示された。現在、EENCの実践の持続可能性および新生児死亡率低下に対する有効性を評価するための調査を続けているところである。

今後の展望

 調査対象施設は、スタッフによるスタッフのための現場教育が浸透しにくい職場風土であったが、セミナー参加者がEENCの普及のためのOJTやトレーニングの企画・開催をチームとして試みる奮闘の過程があったことでEENCの実践率の向上につながったと思われる。さらにタンザニアの医療施設の多くはマンパワーや物品等が十分に備わっていない。現場の継続教育がかなう環境への方策と併せて、長期的なEENCの実践評価と新たな課題を明らかにしつつ、当該施設から、さらに新生児死亡率がより高い農村地域の医療施設へのEENCの展開をタンザニアの人々とともにめざしていきたい。
 なお、これらタンザニアでのEENCの展開については、2018年9月にケニアで開催された第13回East, Central and Southern Africa College of Nursing学術集会で筆者によって口頭発表された。WHOを含め国際的な医療保健にかかわるステークホルダーやアフリカ各国からの看護職が参加する中、持続可能な開発目標(SDGs)における新生児死亡率減少(出生千対12以下)の到達目標に向けてタンザニアと日本が協働して行う活動をアピールする機会となった。
(文責:福冨理佳)

引用文献
1)福冨理佳他:タンザニアの医療施設における早期必須新生児ケア(EENC)のセミナー実施報告,聖路加国際大学紀要,4,p.58-62,2018.

看護 2019年1月号 第71巻 第1号

患者安全とPeople-Centered Care:UHC達成に向けた オープンセミナー開催

 聖路加国際大学WHOコラボレーティングセンターは、2017年度に引き続き、2018年9月1日にWHO本部サービスデリバリーと安全部門のテクニカルオフィサーである梶原麻喜氏をお招きしてオープンセミナーを開催した。2017年度はWHOの機能とIT戦略についてご講演いただき、多数の参加者を得た。2018年度は「患者安全とPeople-Centered Care(PCC):UHC達成に向けたWHOの取組み」と題して、WHOの主要課題であるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現において、医療の安全性とPCCがいかに重要かについてお話しいただいた。

PCCが医療の安全性を高める

世界的に見ると、年間35億人が必要最低限の医療を受けられずにいる。この現状を改善するため、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられるようにしようというのがUHCの理念である。しかし、単に医療へのアクセスを拡大すればよいというものではない。医療が人々の健康に寄与するためには、医療の質を担保することが絶対条件である。2018年7月にWHO、世界銀行、経済協力開発機構が共同で刊行した報告書「医療の質の向上:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた国際的責務」は、医療の質を支える、7つの要素を示している。すなわち、有効性、安全性、市民中心性(People-centeredness)、適時性、公正性、統合性、効率性である。これらの要素がどれ一つ欠けても、医療の質は担保できず、UHCを達成できない。
 奇しくも、筆者は質の劣る医療が途上国の人々の命を奪う経験を、ある国で目のあたりにしたばかりであった。筆者が毎年看護学実習を行うある国のスラム地区のNGOクリニックは、少数の看護師とコミュニティ・ヘルスボランティア(CHV)によって、安全で有効な一次医療を、住民が支払える費用で提供しているのだが、重症な患者の検査や治療を行うには限界がある。あるとき、先天性の心疾患を持つ中学生に下痢が続いたので、検査をするために貧しい住民に無料で治療を提供する公立病院を紹介したのだが、その公立病院で実習中の看護学生に、下痢の症状に対して誤って心疾患の薬を投与されて亡くなってしまった。無料(アクセス可能)であっても、安全でないなら、医療はそもそもの意味がないことを示す例である。
 では、医療の安全性を高めるためにはどうしたらよいだろうか? 梶原氏は、医療の安全性向上には、患者と家族の参画が不可欠だとした。自分が受ける医療に患者や家族が関心を持ち参画することで、治療に関する有害事象を患者と家族自身が予防するだけでなく、健康問題への理解が高まり、意思決定やマネジメントの共有が可能になるからである。しかしながら、意思決定において医療従事者が患者や家族の意向を尊重しようにも、専門的知識を持たない患者や家族には決めることが難しい。そこで、人々が自分や家族の治療や健康増進に参画できるように、ヘルスリテラシーを向上させ、健康管理能力を底上げしようというのがPCCの主要な目的の1つである。
個人や家族だけでなく、人々が所属するコミュニティ(患者団体なども含む)の意識を高め、医療に参画してもらえば、個人やコミュニティの特性に合致した包括的な医療サービスの構築が可能になり、コミュニティに属する個人や家族の健康に寄与することが可能となる。聖路加国際大学は、PCCに関する看護研究や活動を多領域で実施しており、その成果はWHOにも報告されている。
(文責:長松康子)

看護 2018年11月号 第70巻 第13号

第12回WHO看護・助産開発協力センター グローバルネットワーク学術集会への参加

WHO看護・助産開発協力センターは、それぞれの活動を共有し、連携・交流を深めるために2年に1度総会を行い、総会に合わせてWHO看護・助産開発協力センター・グローバルネットワーク学術集会(以下:学会)も開催している。2018年度の第12回学会は、オーストラリアのJames Cook大学がホスト校となり、ケアンズで、7月18〜19日の2日間、総会に先立ち開催された。筆者らは、本学会に参加し、聖路加国際大学WHO看護開発協力センター(以下:WHOCC)の研究活動を報告し、各国のWHOCCとの交流を行った。

“People-Centered Care”の重要性を語る

世界的に見ると、年間35億人が必要最低限の医療を受けられずにいる。この現状を改善するため、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられるようにしようというのがUHCの理念である。しかし、単に医療へのアクセスを拡大すればよいというものではない。医療が人々の健康に寄与するためには、医療の質を担保することが絶対条件である。2018年7月にWHO、世界銀行、経済協力開発機構が共同で刊行した報告書「医療の質の向上:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに向けた国際的責務」は、医療の質を支える、7つの要素を示している。すなわち、有効性、安全性、市民中心性(People-centeredness)、適時性、公正性、統合性、効率性である。これらの要素がどれ一つ欠けても、医療の質は担保できず、UHCを達成できない。
 奇しくも、筆者は質の劣る医療が途上国の人々の命を奪う経験を、ある国で目のあたりにしたばかりであった。筆者が毎年看護学実習を行うある国のスラム地区のNGOクリニックは、少数の看護師とコミュニティ・ヘルスボランティア(CHV)によって、安全で有効な一次医療を、住民が支払える費用で提供しているのだが、重症な患者の検査や治療を行うには限界がある。あるとき、先天性の心疾患を持つ中学生に下痢が続いたので、検査をするために貧しい住民に無料で治療を提供する公立病院を紹介したのだが、その公立病院で実習中の看護学生に、下痢の症状に対して誤って心疾患の薬を投与されて亡くなってしまった。無料(アクセス可能)であっても、安全でないなら、医療はそもそもの意味がないことを示す例である。
 では、医療の安全性を高めるためにはどうしたらよいだろうか? 梶原氏は、医療の安全性向上には、患者と家族の参画が不可欠だとした。自分が受ける医療に患者や家族が関心を持ち参画することで、治療に関する有害事象を患者と家族自身が予防するだけでなく、健康問題への理解が高まり、意思決定やマネジメントの共有が可能になるからである。しかしながら、意思決定において医療従事者が患者や家族の意向を尊重しようにも、専門的知識を持たない患者や家族には決めることが難しい。そこで、人々が自分や家族の治療や健康増進に参画できるように、ヘルスリテラシーを向上させ、健康管理能力を底上げしようというのがPCCの主要な目的の1つである。
個人や家族だけでなく、人々が所属するコミュニティ(患者団体なども含む)の意識を高め、医療に参画してもらえば、個人やコミュニティの特性に合致した包括的な医療サービスの構築が可能になり、コミュニティに属する個人や家族の健康に寄与することが可能となる。聖路加国際大学は、PCCに関する看護研究や活動を多領域で実施しており、その成果はWHOにも報告されている。
(文責:長松康子)

看護 2018年11月号 第70巻 第13号

第2回WHO協力センター連携会議が開催

2018年4月14日(土)に、国内32のWHO協力センター(WHO Collaborating Centre以下:WCC)からの50名、WHO西太平洋地域事務局からの2名、国立国際医療研究センターからの11名が一堂に会し、「具体的な連携・協働に向けて」をテーマに第2回WHO協力センター連携会議が国立国際医療研究センターで開催された(写真1)。

写真1 参加者による集合写真

 第1回は2017年4月23日(日)に、国内34の WCCが集まり、「日本のWHO協力センターの連携促進と今後の連携会議の継続について」をテーマに国立国際医療研究センターで開催された。会議には、WHO西太平洋地域事務局からシン・ヨンス地域事務局長、葛西健事業統括部長も出席され、WCCとしての互いの活動を知る貴重な機会となり、テーマごとのグループ討議からさまざまな連携・協働の案が生み出された。
 今回の会議は、前回会議以降のWCC間の連携・協働の実践状況のフォローアップを行い、教訓を学び合い、さらなる連携・協働に向け具体的な協議を行うことを目的に開催することになった。第1回会議後、17施設が連携・協働していた。講師派遣が最も多く6例、次いで共同研究4例、シンポジウム企画・実施2例、情報交換2例、その他は研修企画・実施、ワークショップ開催、人材交流がそれぞれ1例であった。

連携・協働の事例報告

会議では、WCC8施設から、連携・協働の事例報告があった。共同研究事例として、富山大学大学院医学薬学研究部と北里大学東洋医学総合研究所から「伝統医学の漢方診療標準化プロジェクト」について、北海道大学環境健康科学研究教育センターと大阪母子医療センターから「胎児期から生涯の健康を考慮した母子保健領域の疾病負担と効果的予防介入方法についての俯瞰的研究」についての発表があった。
 また、2017年11月24日(金)〜26日(土)に開催された「グローバルヘルス合同大会2017」★1で、シンポジウムを共催した事例が紹介された。「国際保健人材育成とWHOコラボレーティングセンター」という題材で、聖路加国際大学大学院(聖路加国際大学におけるグローバルヘルスに貢献する若手看護人材育成)、東京医科歯科大学大学院(WHO健康都市・都市政策研究協力センターの活動と研修の機会)、国立保健医療科学院(国立保健医療科学院における研修医を対象とし国際保健も加味した地域保健研修の経験)、群馬大学保健学研究科(多職種連携教育のWHO連携活動による国際保健人材育成)、国立国際医療研究センター (国立国際医療研究センターにおける国際保健に関する継続教育プログラム)が発表したとの報告があった。

今後の連携・協働に向けて

 葛西WHO西太平洋地域事務局事業統括部長から、WHO西太平洋地域における重点課題と方向性についてのお話があり、その後、今後の具体的な連携・協働に向けてグループに分かれて協議した。
 研究や、勉強会・講演会などの開催を協働で実施していこうという話し合いがもたれた。特に私のグループでは、現在実施しているプロジェクトの評価方法についてWCCで勉強会を開き、専門家に学びたいという意見が出た。このような顔の見えるつながりを持つことで、今後もWCC同士の連携や協働を深めていきたい。
(文責:大田えりか)

★1 第58回日本熱帯医学会大会・第32回日本国際保健医療学会学術大会・第21回日本渡航医学会学術集会 合同大会

看護 2018年7月号 第70巻 第9号

WHO西太平洋地域事務局主催 第5回病院の質と患者安全管理研修コースin 国立保健医療科学院の報告

相互の支え合いと知識の共有のために

 2018年3月12〜16日、WHO西太平洋地域事務局(以下:WPRO)主催による「第5回病院の質と患者安全管理研修コース」が国立保健医療科学院において開催され、本学WHO看護開発協力センター(以下:WHO CC)がこれに参画した。西太平洋地域のカンボジア、ラオス、モンゴル、フィリピン、ベトナムから、各国で医療の質の改善に責任のある代表者、計20名が参加した。
 研修には、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)による平等で質の高い医療をめざした講義、そしてわが国のいくつかの医療機関の見学、グループでの討議や高齢者疑似体験演習が含まれていた。これらを通して、①各国での医療の質と安全性を向上するための組織への働きかけや、②質改善のための概念や実践、使用可能なツールを理解し、国としての医療の質と安全管理のネットワークを持ち、相互に支え合い、知識を共有することが目的とされていた。

聖路加国際大学WHO看護開発協力センターによる 小講義でPCCの概念と実際を共有

著者( 右から2 人 目)の講義の後に、 著者のPCC のスラ イドを使いながら PCC の概念を確認 し、参加者に質問を するNittita 氏(左)

 本学WHO CCは昨年度に続き、People-Centered Health Serviceをテーマに、小講義を行った。講義では、超高齢社会であるわが国の人口構造や家族形態、社会保障と今後の変化、医療機関の種類と特徴、そして地域包括ケアについて触れ、参加者の各国よりも高齢化が数段進んでいるわが国の状況と高齢者のための保健・医療システムを概説した。そして、本学がここ10年取り組んできた、People-Centered Care(以下:PCC)による市民と専門職のパートナーシップモデルによる保健・医療サービス提供のあり方について解説した。ここでは、本学が市民との協働による妊産婦から高齢者までを対象とした多様な実践活動から開発したPCCモデルを軸に、WHO の「患者安全とPCCサービスモデル」を対比しながら、WPROが作成したPCCの解説ビデオを用いて、より具体的な理解を促進していった。そして最後には、本学WHO CCにおいて実践しているPCC活動の中から、都市部の高齢者と小学生の世代間交流プログラムを例として、市民と専門職のパートナーシップのあり方について触れ、PCCによる高齢者へのアウトカムとして、うつの改善などに有効であることを解説した。
 WHO WPROの本セミナーの担当官Nittita Prasopa-Plaizier氏は、PCCモデルの推進派である。講義の後に自ら各参加者に「あなたは患者のことをよく理解していますか?」「患者を尊敬していますか?」など、具体的なPCCの構成要素に触れる質問をして、各国の医療機関のトップである参加者が「ええ、そうしていますよ」と応じるなど、より具体的にイメージできるような解説を加えた。
医療職が患者を理解し、互いに尊敬し合い、各々が役割を担い、意思決定を共有するというPCCのパートナーシップを行うことに費用はかからない。各国の限られた医療資源の中でケアを行う専門職の姿勢として、PCCはSDGsの達成にとても有効であると感じることができたセミナーとなった。
(文責:亀井智子)

看護 2018年5月号 第70巻 第6号

WHOデジタルヘルス最前線と国際機関で働くためのキャリア開発

 2017年11月11日、世界保健機関(World Health Organization:WHO)ジュネーブ本部Service Delivery and Safety(SDS)★1部門のテクニカルオフィサー・梶原麻喜氏をお招きし、聖路加国際大学WHOプライマリーヘルスケア看護開発協力センターPeople-Centered Care(PCC)セミナーを開催した。
 はじめに、聖路加国際大学研究センターPCC実践開発研究部・WHO看護開発協力センターの亀井智子部長・センター長より、聖路加国際大学のWHOコラボレーティングセンターとしての歴史、現在取り組んでいるPCCの活動について説明した。
 その後、梶原氏に「WHOデジタルヘルス最前線と国際機関で働くためのキャリア開発」と題して、
①WHOでの実際の取り組み、②デジタルヘルスについて、③国際機関でキャリアを構築するために、という3点に関して講演していただいた。

WHOの取り組み

 はじめに、WHOの組織の仕組み、2017年5月の選挙で選出されたテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長、SDS部門で新しく選出されたシニアマネジャーを紹介。WHOに課せられている6つの機能★2や担当する分野について、さらに、新事務局長が独自に重点分野としている、すべての人々の健康、危機管理、女性、子どもと青少年、気候と環境変動による健康へのインパクト、WHO変革に関して説明された。
 また、取り組むべき課題として、教育、気候変動、ジェンダー、不平等、実施手段などを掲げ、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」について述べられた。SDGs達成のためにユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)★3の概念が重要視されており、すべての人に健康と福祉を届けるために、保健サービスの量と質の両方の重要性が問われていると指摘。保健システム強化のため、質の高い安全な保健サービスを提供できるよう支援しているSDS部門での横断的な取り組みに関しての解説もあった。

講師の梶原麻喜 氏(1 列目右か ら3 人目)とセ ミナー運営ス タッフ

デジタルヘルス★4については、近年のデータ収集項目の増加、正確で効果的なデータ分析の必要性、科学的根拠に基づいた意思決定や医療従事者および患者、患者家族、地域への支援の需要が高まっており、UHC達成に向けて重要な要素となっていることを報告。リプロダクティブ・ヘルス、非感染性疾患に関するプロジェクトに第一線でかかわった経験に基づき、開発途上国での展開と今後の課題についても述べられた。
 最後に、自身のキャリアパスについてと、国際機関でキャリアを構築するために重要な要素に関してお話があった。会場からは、活発な質疑があり、国際機関でキャリアを構築するためには、どのような知識や経験が必要かを考える機会となった。
(文責:大田えりか)

★1 各国の保健システムの効率化と有効性のためにそれぞれの国が保健医療について再考することを支援する部門 
★2 ①医学情報の総合調整、②国際保健事業の指導的かつ調整機関としての活動、③保健事業の強化についての世界各国への技術協力、④感染症およびその他の疾病の撲滅事業の促進、⑤保健分野における研究の促進・指導、⑥生物学的製剤及び類似の医薬品、食品に関する国際的基準の発展・向上 
★3 すべての人が適切な保健医療サービスを、必要なときに支払い可能な費用で受けられること 
★4 eヘルスと同義。情報通信技術(ICT)と医療にかかわる、すべてのコンセプトとアクティビティの総称。医療情報技術、電子カルテ、遠隔医療などを含む