WHOCCWHO Collaborating Center for Nursing Development in Primary Health Care

WHO News

看護 2023年3月号 第75巻 第3号

国際基準と比較して見る日本のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ

 1994年にエジプト・カイロで行われた国際人口開発会議(ICPD:International Conference on Population and Development)では、行動計画の中に初めて「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR:Sexual Reproductive Health/Rights)」が盛り込まれた。これは「人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由を持つ」ということを意味している。この概念では、女性の健康は母子保健にとどまらず、生涯を通じた性と生殖の健康/権利が保障されるものであるとされ、女性の健康に関する重要な概念のパラダイムシフトとなった。
 女性が安全な避妊・中絶を選択できることも重要なSRHRの1つであり、国際社会では、女性自身が選択する権利が保障されるよう、さまざまな取り組みが行われている。

世界の中でも遅れている日本のSRHR

 避妊法の選択からみていくと、先進国の中でも、日本の避妊実行者の割合は低いのが現状である。また、選択される避妊法も圧倒的に男性用コンドームが多く、女性が主体的に選択できるIUD(子宮内避妊用具)やピル(経口避妊薬)の使用率は非常に低い(図表1)。国際助産師連盟(ICM)は、助産実践に必須の能力(コアコンピテンシー)として、避妊方法のカウンセリングを含む、妊娠前の女性へのケアを挙げている。日本の助産師・看護師においても、このような女性への包括的なヘルスケア提供の役割を認識していくことが必要である。
 また、WHOによると、2000年に起こった世界の母体死亡の約13%は危険な中絶によるものであったと報告されている。安全な中絶を選択できるようにすることは、女性の命を救うだけでなく、女性が子どもを産む・産まないの選択をする権利でもある。2022年にWHOにより、「Abortion care guideline(中絶ケアガイドライン)」が出版され、日本語訳の「中絶ケアガイドラインエグゼクティブサマリー」が日本助産学会のホームページ★で公開されている。筆者(大田)も監訳に参加した。
 このガイドラインでは、中絶の完全な非犯罪化が推奨されているが、日本では未だ明治時代から続く堕胎罪が存在し、母体保護法による条件付きで、中絶が合法化されている状況である。
 また、WHOガイドラインの勧告では「本人以外のいかなる個人、団体または機関の承認の必要なく、女性、女子、その他妊娠した人の希望に応じて中絶できるようにすることを推奨する」としているが、日本では中絶への配偶者の同意が必要であり、女性だけの意思決定では選択できないのが現状である。
 中絶の手法も、1948年に医師の認定によって一部中絶が合法化して以来、当時の手法であった法が主に用いられている。しかし、世界では1988年からは、女性の体への負担の少ない経口中絶薬が用いられ、現在では80カ国で経口中絶薬による中絶が行われている。

安心・安全な避妊・中絶ケアをめざして

日本のSRHR分野における課題はまだ多く残されている。誰でも、自分の体のことは自分で決める権利を持っている。「子どもを産むのか、産まないのか」「産むなら、いつ産むのか」「何人産むのか」などを決めることは、女性が持つ基本的な権利なのである。
 まずは、これらの課題に目を向け、日本の女性が自分で選択し、安心して安全な避妊・中絶ケアを享受できる社会となるよう期待したい。
(文責:大田 えりか、鈴木 瞳)

参考文献

  1. https://www.jyosan.jp/modules/topics/index.php?content_id=95[2022.11.14確認]

看護 2023年1月号 第75巻 第1号

フィリピンのプライマリーヘルスケアにおける緩和ケア

 苦痛のない死の達成は、人の基本的権利である。世界保健機関(WHO)は、緩和ケアへのアクセス向上のためのプライマリーヘルスケア・アプローチ、すなわち、訓練を受けた医療従事者やヘルスボランティアによる廉価な薬剤や医療器具を用いたコミュニティを基盤としたケアを推奨している。しかしながら、モルヒネなどの麻薬製剤を享受できるのは先進国のみで、開発途上国を中心とする世界人口の75%は十分な緩和ケアを受けることができずにいる1)。
 WHOは、訓練を受けた医療従事者やヘルスボランティアが、廉価な薬剤や機材を地域住民に提供する緩和ケアを推奨している2)。筆者は、フィリピン都市近郊地域の貧困層向け緩和ケアプログラムを支援しているので報告する。

ヘルスボランティアから始まる緩和ケア

 フィリピンの首都マニラから車で1時間ほどの郊外にあるカヴィテ(Cavite)は人口10万人ほどの町である。この町にある貧しい人たちの居住地では、キリスト教系のクリニックが無料の医療サービスを提供しており、緩和ケアは、ボランティア医師と助産師・看護師およびヘルスボランティアが実践している。ヘルスボランティアが緩和ケアが必要な患者を見いだすと、医師が診察し、必要な処方を行う。そして、助産師・看護師が定期的に患者を訪問し、症状アセスメントを行う(写真1)。
 クリニックでは、がん患者へのモルヒネ製剤の処方も行っているが、この地域では、がん患者はごく短期間のうちに亡くなるため、緩和ケアを受けているがん患者は少ない。がんの無料スクリーニングが導入されていないフィリピンでは、診断時には、がんが進行していることが多く、患者の生存期間が短いのである。
 そのかわりに、脳血管障害の後遺症に苦しむ患者が多い。麻痺によって日常生活動作や会話に困難をきたし、仕事を失った患者の苦しみは深く、家計を支えながら患者のケアを行う家族の負担は大きい。

COVID-19の影響によるケアの変化

クリニックでは、理学療法士の資格を持つシスターが患者と家族にリハビリを指導し、自宅でのリハビリを推奨している。身体拘縮による痛み、褥瘡、皮膚炎、胃腸障害、咳や痰など、脳血管障害患者はさまざまな苦痛を経験している。不安や悩みから不眠をきたす者も多い。医師は、患者と家族の訴えをよく聞き、なるべく廉価な薬剤を選んで処方している。抗生物質は高価なため、簡単には処方できない。
 身体的苦痛に対する処方だけでは解決できない患者と家族への苦しみに対しては、医師、助産師・看護師、ヘルスボランティアが耳を傾け、励まし、祈り、希望者には司祭によるスピリチュアルケアを導入する。新型コロナ感染症(COVID-19)によって、家庭訪問が困難になった2020年以降は、携帯電話を使って患者・家族と連絡を取り、症状を確認して処方を行い、家族が薬局で薬剤を購入している。
 フィリピンの人たちは、家族を大切にする民族で、病人の世話もよくするが、長期にわたる介護は負担が大きい。筆者は、清拭など介護の基礎的技術等の支援を今後行う予定である。
(文責:長松 康子)

引用文献

  1. International Narcotics Control Board : Narcotic drugs Estimated world requirements for 2016 Statistics for 2014, United Nations, New York, 2016.[2022.11.14確認]
    2)]
  2. World Health Organization : Integrating palliative care and symptom relief into primary health care: a WHO guide for planners, implementers, and managers. World Health Organization ,
Geneva,2018.[2022.11.14確認

看護 2022年11月号 第74巻 第13号

2022 世界患者安全の日「Medication Safety」

 毎年9月17日は「世界患者安全の日」(World Patient Safety Day)です。世界患者安全の日は、2019年のWHO総会において制定され、「患者安全を促進すべくWHO加盟国による世界的な連携と行動に向けた活動をすること」を目的とし、医療制度を利用するすべての人のリスクを軽減することをめざし、患者安全を促進することへの人々の意識、関心を高め、国際的な理解を深めるためのキャンペーンです1,2)。
 日本を含むOECD(経済協力開発機構)加盟国において、患者への有害事象の約半数が発生するとされるプライマリ・ケアと外来診療の場では、推定で40%近くの患者が医療安全上の問題を経験することが報告されています3)。また、特に低中所得国での入院では、年間1億3000万件以上もの有害事象が発生し250万人超の死亡を引き起こしているといわれます4)。
 これらの問題に対し、世界患者安全の日は2019年からこれまでに年間のテーマ・スローガンを掲げ、患者安全の促進に取り組んできました。
 2022年は、テーマに「Medication Safety(安全な薬剤療法)」、スローガンに「Medication without harm(害のない薬剤療法)」が掲げられています。医療における予防可能な有害事象のうち最大の約半数の割合を占めるのは薬害と報告され、安全な薬剤療法によって世界の420億ドルの医療費が回避可能と推定されています1)。薬剤療法は最も利用される医療行為であり、薬害による大きな心理的・経済的負担を再認識し、その予防がめざされています。WHOは、本年の行動に「Know. Check. Ask.(知ろう、確認しよう、質問しよう)」を掲げ、患者と医療者の双方へ患者安全のための行動を喚起しています。
 日本医療安全調査機構に届けられた医療事故報告(5年間集計:2015年10月~2020年9月)においても薬剤に関連した死亡事例は273例報告され、薬剤の誤投与に起因する死亡の再発防止に向けた提言も示されており、日本においても薬剤療法に関する患者安全への取り組みは必須です5)。
 推奨される与薬の原則(6R)、① Right Patient(正しい患者)、②Right Drug(正しい薬剤)、③Right Purpose(正しい目的)、④Right Dose(正しい用量)、⑤Right Route(正しい用法)、⑥Right Time(正しい投与時間)とも共通する本年の世界患者安全の日の行動喚起「Know. Check. Ask.」は、医療従事者だけでなく患者自身のヘルスリテラシーを高めることも同時にめざされます。患者と医療従事者のパートナーシップの促進が、日本の「安全な薬剤療法」の一助となることが期待されます。今後の連携・協力に向けて
WCCの役割として、WHOと一体となって活動に取り組んでいくことが求められている。それによってWCCの活動の価値もより高まる。今回、各WCCが素晴らしい活動を行い、多くの成果を上げていることが報告されたが、それが国内での情報共有に留まってしまうのはもったいないというコメントが複数の参加者から述べられた。
“For the future”という共通の指針に基づいて、WHOとWCCの連携、国内のWCC同士の連携、そして海外のWCCとの連携といった縦横に広がる連携が、世界の健康への貢献へとつながっていく。
(文責:福冨 理佳)

参考文献

  1. WHO : World Patient Safety Day 2022.(https://www.who.int/campaigns/world-patient-safety-day/2022)[2022.9.27確認]
  2. 日本看護協会 : 看護実践情報 世界患者安全の日(https://www.nurse.or.jp/nursing/practice/anzen/worldpatient_safetyday/index.html)[2022.9.27確認]
  3. Auraaen,A.,et al. : The economics of patient safety in primary and ambulatory care: Flying blind,OECD Health Working Papers, No.106,OECD Publishing,2018.(https://doi.org/10.1787/baf425ad-en)[2022.9.27確認]
  4. National Academies of Sciences, Engineering,and Medicine : Crossing the Global Quality Chasm: Improving Health Care Worldwide,The National Academies Press,2018.(https://doi.org/10.17226/25152)[2022.9.27確認]
  5. 日本医療安全調査機構 : 医療事故の再発防止に向けた提言「第15号 薬剤の誤投与に係る死亡事例の分析」,2022.(https://www.medsafe.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=87)[2022.9.27確認]

看護 2022年7月号 第74巻 第11号

インドネシアの医療系教員へのTeam Based Learningの導入に向けた オンデマンドセミナー報告

筆者は「インドネシアの医療系教員へのTeam Based Learning(以下:TBL)の導入」に向けて取り組んでいる(詳細は本連載2022年1月号参照)。2021年度はTBLの知識や概要に関するオンデマンドセミナーを行ったので、その報告をする。
TBLとは「チーム基盤型学習法」であり、予習、個人テスト、少人数チームでのテストを行い、その内容について教員が適宜フィードバックしていく教授方法である。看護教育におけるTBLについては、米国・英国・韓国・イランなどで研究が行われており、学生の学習成果や専門家間のスキルの向上によい結果が得られている1)。また、2021年度に聖路加国際大学博士後期課程の大学院生が、インドネシアの助産学生を対象に産後の大量出血への対応についてTBLでの教授方法を展開し、知識や臨床推論、授業への参加度の向上が確認された2)。さらに、この結果をもとに、インドネシアの他教育機関においても、TBLの導入を検討することとなった。
今回のオンデマンドセミナーは、インドネシアの医療系大学でTBLの導入に興味のある教員向けのセミナーを開発し、その実行可能性を評価することを目的とした。オンデマンドセミナーのコンテンツは「TBLとは何か」「TBLの授業設計」についてで、それぞれ30分と20分の動画であった。動画の内容には、TBLの定義、利点、プロセス、TBLの実施、コース設計、作問の方法などの基礎的なTBLの知識が含まれており、資料は文献を基に作成した。
参加者は、オンデマンドセミナー視聴の事前・事後にGoogle formにてアンケートへ回答した。アンケート内容は、2つのオンデマンドセミナーの「理解度(従来の授業とTBLの授業との違い、TBLの効果、コースデザインなどの13項目)」、「受容性(学生のニーズ、適用できそうか、実装に向けての障壁などの4項目)」、「満足度」であった。
本オンデマンドセミナーには、30歳から49歳の15人の教員が参加した。事後アンケートでは、TBL(5項目)、コースデザイン(6項目)について、事前アンケートと比較して有意に「理解度」が深まっていた(P<0.001)。実現可能性については、参加者はTBLの実施に好意的である一方で、73.3%の参加者は「実施に際しての障壁がある」と回答していた。
オンデマンドセミナーについては、参加者全員が高い満足度を示していた。実施に関する自由記述欄では、TBLをオンラインで実施する方法や、iRAT/tRATテストの作成方法(図表1)についてなど具体的な質問が記述されていた。
オンデマンドセミナーにより、TBLに関する理解度が向上し、TBLの受容性が高いことが確認された。よって、2022年度は、医療系教員のTBL導入に向けた実装研究を計画していく予定である。。
(文責:宍戸 恵理)

看護 2022年5月号 第74巻 第6号

在日外国人向けオンラインCOVID-19ワクチン勉強会の実施報告

在日外国人に向けたCOVID-19の情報提供

 新型コロナウイルス感染症(以下:COVID-19)の世界的流行は、多数の死者を出したばかりでなく、人々の生活に大きな影響をもたらした。新しい感染症であるCOVID-19の脅威から身を守るためには、病気、検査方法、治療、感染状況および医療サービスについて常に最新の情報を得る必要がある。
 WHOは、COVID-19パンデミックの脅威から難民や移民を守るよう政策の推進を呼びかけている1)。しかしながら、パンデミック下において迅速にCOVID-19に関する正しい情報を多言語で提供することは容易ではない。わが国においても、COVID-19流行初期における在日外国人向けの情報は非常に限られていた。2020年にCOVID-19に関して優先度に応じて受診するシステムを政府が打ち出した際には、多くの外国人が受診方法を理解できず、不安に感じていた。
 筆者らは、在日外国人コミュニティより、COVID-19に関する情報提供を求められたことから、2020年に在日外国人向け「COVID-19への対処方法」、2021年には「COVID-19ワクチン」に関する勉強会をオンラインで実施した。本稿では、2021年5月に実施された「COVID-19ワクチン」の勉強会について報告する。

引用文献

  1. Dearnley, C. et al.:Team based learning in nursing and midwifery higher education; a systematic review of the evidence for change, Nurse Education Today, 60, p.75-83, 2018.(https://doi.org/10.1016/j.nedt.2017.09.012.)[2022.7.11確認]
  2. Ulfa, Y., Igarashi, Y., Takahata, K., Shishido E., Horiuchi S.:A comparison of team-based learning and lecture-based learning on clinical reasoning and classroom engagement: a cluster randomized controlled trial, BMC Medical Education, 21, p.444, 2021.(https://doi.org/10.1186/s12909-021-02881-8)[2022.7.11確認]

勉強会の内容と参加者からの質問・要望

2021年5月当時、日本では医療従事者や高齢者に対するワクチン接種が始まっていたが、一般市民に対する接種は開始されていなかった。多くの在日外国人は、ワクチンに関してある程度の情報は独自に得ていたものの、詳細について医療従事者に質問する機会や医療サービスの受け方に関する情報を必要としていた。
そこでオンライン勉強会では、在日外国人がワクチン接種において抱えている不安や疑問を事前に取りまとめ、それらについてワクチン接種を実施している看護師が講義を行い、その後にCOVID-19患者の治療を実施している医師が参加者からの質問に回答するという形式で行うこととした。なお、これらのプログラムは英語で実施され、フィリピン人を中心に日本各地から外国人60人が参加した。
講義内容は、ワクチンの有効性、接種券を用いたワクチン接種の受け方、問診票の書き方、実際の接種の様子、予想される副反応と対処法などであった。また、参加者からは、アレルギーや持病を持つ場合のワクチン接種の安全性や「COVID-19感染歴があるがワクチン接種は必要か」「インフルエンザワクチンと同時に接種してよいか」などの質問が寄せられた。
さらにCOVID-19ワクチン接種を希望する参加者からは、接種会場における多言語対応や多言語の問診票配置などの要望があった。このうち、多言語問診票については、現在、厚生労働省ホームページからのダウンロードが可能である2)。
(文責:長松 康子)

参考文献

  1. https://www.who.int/activities/promoting-the-health-of-refugees-and-migrants-during-covid-19-pandemic
  2. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_tagengo.html

看護 2022年7月号 第74巻 第9号

第4回WHO協力センター国内連携会議が開催

2022年4月26日(火)、第4回WHO協力センター国内連携会議が国立国際医療研究センター国際医療協力局にて開催された(図表1)。WHO協力センター(以下:WCC)とは、WHOのプログラムの支援活動を行うために事務局長によって指定された機関であり、現在80以上の加盟国で800以上の研究施設や大学等が指定されている1)。
今回の連携会議にはWHO西太平洋地域事務局(WPRO)の葛西健事務局長はじめ、日本WHO協会、WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)、そして日本国内の37のWCCのうち35施設からの参加があり、参加者数は80人を超えた。2017年以降、WCC連携会議は年に1回開催されているが、COVID-19の影響により中止が続いていたため、今回は3年ぶり、そして初めてのオンライン開催となった。
WPROの今後の方向性と日本国内のWCCへの期待
葛西事務局長は西太平洋地域における活動の指針である“For the future”2)を踏まえながら、急速な変化と大きなダイバーシティが特徴である西太平洋地域において未来を見すえた対策の重要性を強調した。また、COVID-19のパンデミックにより、健康と人々の生活がいかに結び付いているかをあらためて強く認識した今、西太平洋地域19億人の健康を向上させるために日本の経験とエビデンスを役立たせることを、日本国内のWCCへの期待として述べた。

COVID-19パンデミックにおける活動紹介

会議では6施設からの活動報告があり、コロナ禍における厳しい状況の中で活動を続けてきたWCCの事例を共有した。発表内容は、臨床分野、口腔健康、自殺対策、支援者のメンタルヘルス、リハビリテーション、水と衛生と多岐にわたり、人々の健康に関連する要素の多様さをあらためて認識する場となった。
このほかにも12施設から11のポスター発表がウェブ上で行われていることが報告された。聖路加国際大学は、在日外国人向けオンラインCOVID-19ワクチン勉強会に関するポスターを発表した(ポスターセッションの内容は国立国際医療研究センターのウェブサイトに掲載されている)★。

今後の連携・協力に向けて

WCCの役割として、WHOと一体となって活動に取り組んでいくことが求められている。それによってWCCの活動の価値もより高まる。今回、各WCCが素晴らしい活動を行い、多くの成果を上げていることが報告されたが、それが国内での情報共有に留まってしまうのはもったいないというコメントが複数の参加者から述べられた。
“For the future”という共通の指針に基づいて、WHOとWCCの連携、国内のWCC同士の連携、そして海外のWCCとの連携といった縦横に広がる連携が、世界の健康への貢献へとつながっていく。
(文責:大田えりか、二田水彩)

参考文献

  1. WHO:Collaborating centres.(https://www.who.int/about/collaboration/collaborating-centres)[2022.5.19確認]
  2. WHO:For the future: towards the healthiest and safest Region, 2020.(https://www.who.int/publications/i/item/for-the-future-towards-the-healthiest-and-safest-region)[2022.5.19確認]

★ https://kyokuhp.ncgm.go.jp/etc/network/who.html