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2023年度学位授与式 学長 祝辞(2024年3月8日)

学長 堀内 成子

看護学部

本日、学位を取得し本学を卒業される看護学部124名の皆さん、おめでとうございます。皆さんを支え、この日を心待ちにしていらしたご家族・ご友人の皆様に心からお祝い申し上げます。
教育にご支援いただきました患者様、多くの保健・医療機関の皆様、同窓会をはじめ奨学金や寄付等のご支援をくださいました皆様に心より御礼申し上げます。本日、天井の改修工事を終えたチャペルで卒業式が行えるのは、2018年3月以降初めてで実に6年ぶりとなり、この場所にこうして立てることに感謝いたします。
卒業生の皆さんが本学に入学した時期は、新型コロナウィルス世界的流行のただ中にあった時期でした。清里での宿泊オリエンテーションセミナーもなく、白楊祭も、クリスマス祝会も、実習も、部分的に制限されたなかでの大学生生活だったと思います。コロナ時代に不自由な学業生活を創意工夫と努力とで乗り越えて、目標であった看護の基礎教育を終える皆さんに心から拍手を贈ります。
キリスト教の若き20代の宣教医であった本学創設者トイスラー博士は、1900年2月にサンフランシスコから横浜港まで18日間の船旅でたどり着きました。到着から数日後に目にした病院は、「小屋」と呼ばれていた粗末な建物でした。トイスラー博士は、様々な場面で新たに病院を立てること、病院そのものについて、人々に説明することが必要でした。病院建設の為にアメリカからの支援に大きく頼っていたのですが、当時米国では、日本における宣教医療活動は必要ないと考える人々も多くいたようです。日露戦争当時の衛生管理の成果が誇張報道されていた為、「日本の医療は進んでいる」という誤解が生じていたようです。
博士は、日本には設備が整っていない、管理も行き届いていない小さな病院が多いこと、日本ではただ薬を渡すだけの町医者と、病人への援助と言えば“家族にはじまり家族に終わる”現状だと説いています。
トイスラー博士の分析は、当時の日本の医療は、ドイツ医学の影響で診断や治療方法など基礎医科学が高度化している一方で、患者の取り扱いや看護、病院運営から地域公衆衛生活動にいたるまでの医療の最前線、実践分野が遅れていると考えていました。その為、アメリカを手本とした宣教医師の派遣が東京には必要であり、支援が必要だと母国の人々に、繰り返し訴え続けたと記されています。

果たして、120年後の2020年代の日本は、どのように変化したのでしょうか?少なくとも、「日本における病人への援助は、“家族にはじまり家族におわる”ではなくなった!!専門職である看護師やチーム医療と言われる専門家がそれぞれの分野の専門性を発揮して病人への援助が可能な社会になった」と伝えたい。

そして、これからの100年は、どんな時代がやってくるのでしょうか?もしかすると、病棟には1人の人間看護師と、検査ロボット、搬送ロボット、診断医ロボット、だけかもしれません。でも、決して忘れないでください。最も初めにAIに教えるのは誰ですか?そうです。最も初めにAIをプログラムするのは人間です。
「人間の反応に基づく喜ばれるケア、不愉快に思っているケアはこれだよ」と最初にAIに教える人間の特性を間違えてはいけません。皆さんが時代の求めに応じて、「知と感性と愛のアート」の精神を受け継ぐ人であると心より願います。

皆さんにとって卒業後の世界では、障壁となる出来事があるでしょう。初めての仕事や課題で、失敗はつきものです。出来ない自分を認めることは、情けない、恥ずかしい、辛いことでしょう。でも、できない自分を認めない限り、成長はありません。そして、工夫と努力を重ねてください。「Power of Yet! まだのもつ力」です。「看護師になりたい、医療に貢献したい」という意志を持ち続けて、やり抜いてください。

これを持ちましてお祝いの言葉といたします。


大学院

Congratulatory message from the President (Nursing Science and SPH)

COVID-19 has affected every part of our lives. This includes the way you learn and conduct research. Some students were even forced to postpone their studies. That is why I am truly proud of all of you for the diligence and creativity you have shown that allows you to be here today.
This University has its origins in St. Luke's International Hospital, which was founded in 1901 by the American missionary physician, Dr. Rudolph Teusler. He was only 25 years old when he came to St. Luke's. What Dr. Teusler saw in Japan was poorly equipped and poorly managed small hospitals, town doctors who simply hand out medicine, and the reality where ill people’s care “started with the family and ended with the family.” He shared his observations with the United States and obtained large donations to build the foundation of St. Luke’s hospital.
One hundred twenty years later, today in 2024, how things have changed in Japan? At the very least, support for the unwell people NO LONGER “starts with the family and ends with the family”!! We have Nurses, Physicians, Epidemiologists, Healthcare statisticians, and many other health care experts who are working hard every day to help the sick. We have a team of professionals to support one patient.

We published a booklet titled “100 episodes in St. Luke's Nursing” to celebrate our school’s 100th Anniversary . In the book, one alumnus wrote that St. Luke’s was where she was re-raised, found her lifelong friends, and built her career foundation. She wrote: “My life is insignificant, but I have a mission as a nursing professional who serves for suffering people.” And her next line is inspiring: “If no one else is doing it, I will do it myself.”
I was so touched by this phrase, “if no one else is doing it, I'll do it myself” because I believe this is the very spirit of St. Luke's.
So what’s next? What kind of times will the next 100 years bring? Perhaps there will be only one human nurse, multiple testing robots, diagnostic robots, and transport robots in the ward. But never forget. Who will be the first to teach the AI? That’s right. Humans are the first to program AI. Only humans can tell what type of care feels comfortable and what feels uncomfortable.
I hope that all of you will examine the needs of the times and inherit our school spirit of “The art of knowledge, sensitivity, and love.” Please stay humble and grateful, be proud of the fruits of your labor, and go forth towards the future.

In this room, theres are 62 master’s and 13 doctorate graduates in Nursing Science, and 29 Master’s and one Doctorate Public health graduates. You are from all over Japan, Afghanistan, Eswatini, Kenya, Syria, Tonga, Bhutan, Nepal and China. Your family and friends have supported you and long awaited for this day. Many patients have helped you with your studies. The medical staff, admin, faculty, and the alumni association have supported you through direct teaching, operation, scholarships, donations, and many more. And we are here to celebrate the completion of one of your life chapters. This is a big accomplishment!

Congratulations!

Shigeko Horiuchi, Ph.D., President


日本語(要旨)

本日、学位を取得し本学を・修了される皆さん、おめでとうございます。
withコロナ時代に不自由な学業生活を乗り越えて、目標を達成された皆さんに心から拍手を贈ります。

キリスト教の若き20代の宣教医であった本学創設者トイスラー博士は、1900年2月にサンフランシスコから横浜港まで18日間の船旅でたどり着きました。当時の日本は、設備が整っていない、管理も行き届いていない小さな病院が多いこと、ただ薬を渡すだけの町医者と、病人への援助と言えば“家族にはじまり家族に終わる”現状だと説いています。
さて、2024年の日本はどうでしょうか? 少なくとも、患者さんへの支援は「家族で始まり家族で終わる」ではなくなっていると言いたい。専門家である看護師、医師、疫学者、医療統計学者、いわゆるチーム医療の専門家が、それぞれの分野の専門知識を活かして病人を助けていると。

本学では2020年看護教育100周年を記念して「聖路加の看護100のエピソード」を発行しました。その中に『育て直しの場』という寄稿がありました。「母校聖路加は、私にとって、育てなおされた場であり、生涯の友をもたらしてくれた場であり、職業人生の基礎を培ってくれた場である。」で始まります。大学院での学びは、「ちっぽけな人生だけれど、苦悩する人のため、看護職として必要だと思うことに信念をもって」、そして次が大切なフレーズです。「誰もやっていないなら自分がやろう」と。その礎になったのは、大学院で学んだ「看護のスピリット」であると記しています。
この「誰もやっていないなら自分がやろう」と引き受ける勇気と覚悟、このフレーズはまさに聖路加の精神であると私の心は震えました。
さて、これからの100年は、どんな時代がやってくるのでしょうか?もしかすると、病棟には1人の人間看護師と、検査ロボット、搬送ロボット、診断医ロボット、だけかもしれません。でも、決して忘れないでください。最も初めにAIに教えるのは誰ですか?そうです。最も初めにAIをプログラムするのは人間です。
「人間の反応に基づく喜ばれるケア、不愉快に思っているケアはこれだよ」と最初にAIに教える人間の特性を間違えてはいけません。皆さんが時代の求めに応じて、「知と感性と愛のアート」の精神を受け継ぐ人であると心より願います。どうか謙虚に周囲の人々から教えを乞う姿勢を持ち続けて、未来へと進んでください。
これを持ちましてお祝いの言葉といたします。