WHOCCWHO Collaborating Center for Nursing Development in Primary Health Care

WHO News

看護 2024年3月号 第76巻 第3号

帝王切開術後の母乳育児に関する国際的な現状と タンザニアにおける支援の取り組み

帝王切開術後の母乳育児に関する国際的な現状
世界全体の帝王切開術率は、1990年代では約7%であったが、2021年の時点で21%と報告されており、さらに2030年までに29%まで増加することが予測されている1)。帝王切開術は、医学的な必要性がある場合、母児の命を救うために必要な手術であるが、リスクも複数存在しており、その1つとして母乳育児開始や早期母子接触実施の遅れが指摘されている2)。
そのような状況を踏まえ、私たちは帝王切開術での出産は経腟分娩と比較して、実際にどの程度母乳育児に影響があるのかを明らかにすることを目的として、帝王切開と経腟分娩の両方について産後早期から6カ月後までの母乳育児率のスコーピングレビューを実施した。その結果、経膣分娩後では34論文中過半数以上の論文において早期母乳育児開始率が60%以上であり、40%以下であったのはわずか3論文であった。一方、帝王切開術後では、 6割以上の22論文において早期母乳育児開始率が40%以下であった3)。
次いで、より具体的な支援を検討するために、帝王切開術を受けた女性の母乳育児の体験について1990年以降に出版された英語で記述された質的研究(原著論文)のメタ統合を実施した。この結果は、2023年10月に開催された第64回日本母性衛生学術集会にて発表を行った。統合の結果、25のサブカテゴリと6つのカテゴリが生成された。「母乳育児を可能とする支援システム」というカテゴリには、“医療者からの十分なサポート”“早期母子接触の実施”といったサブカテゴリが抽出され、帝王切開術後の母乳育児の適切な支援には、医療者への母乳育児に関する教育や早期母子接触の標準化が必要であることが示唆された4)。

タンザニアにおける支援の取り組み
最後に、このような帝王切開術後の母乳育児の現状に対する支援の取り組みの一例を報告する。聖路加国際大学では、看護学研究科修士課程にウィメンズヘルス・助産学専攻上級実践コース助産学分野JICA青年海外協力隊・大学連携事業(JICAコース)を設けている。派遣先で青年海外協力隊としてのボランティア活動とともに、派遣先の状況に合わせた研究活動を行うコースである。私は、その研究活動の1つとして、タンザニアの3次医療機関において、帝王切開術を受ける母児の母乳育児支援を目的とした取り組みを進めてきた。2021年には、妊娠期からの家族を含めた母乳育児教育、医療者へのトレーニング、帝王切開術時の早期母子接触の実施を含むプログラムを導入し、完全母乳率に及ぼす効果を検証した。早期母子接触の実施の有無については、介入群と対照群に有意差は見られなかったものの、妊娠期の母乳育児教育を実施したところ、産後4カ月時点での完全母乳率が70%以上になるといった効果が見られた(タンザニアの国全体の産後4カ月時点の完全母乳率は26.6%)5)。このような取り組みを継続し、今後さらに帝王切開術を受ける母児に対する支援を充実させていく必要があると考える。
(文責:五十嵐由美子)

引用・参考文献

  1. Betran A.P., et al.:Trends and projections of caesarean section rates:global and regional estimates, BMJ Global Health, 6(6), e005671, 2021.
  2. WHO:Caesarean section rates continue to rise, amid growing inequalities in access, 2021. (https://www.who.int/news/item/16-06-2021-caesarean-section-rates-continue-to-rise-amid-growing-inequalities-in-access) [2023.12.25確認]
  3. Ulfa Y., et al.:Early initiation of breastfeeding up to six months among mothers after cesarean section or vaginal birth:A scoping review, Heliyon, 9(6), e16235, 2023.
  4. UlfaY., et al.:Women’s experiences of breastfeeding after a cesarean section: A meta-synthesis, Japan Journal of Nursing Science, 20(3), e12534, 2023.
  5. Igarashi Y., et al.:Effectiveness of an Early Skin-to-Skin Contact Program for Pregnant Women with Cesarean Section:A Quasi-Experimental Trial, International Journalof Environmental Research and Public Health, 20(10), 5772, 2023.

看護 2024年1月号 第76巻 第1号

World Patient Safety Day(世界患者安全の日〈WPSD〉)2023

今年のテーマは「患者安全のための患者参加」
 「世界患者安全の日(WPSD)」は、2019年に第72回世界保健総会で制定され、毎年9月17日に国際社会でさまざまなイベントが実施される★1。今年のテーマは「Engaging patients for patient safety(患者安全のための患者参加)」であり、患者が自らのケアに積極的なパートナーとして参加し、政策立案や病院のガバナンス構造にも参加することで、結果として患者の安全性と満足度が向上し、健康アウトカムも改善されることを示すエビデンスの蓄積を踏まえたものである。WHOスイス・ジュネーブ本部で9月12日、13日に行われた世界会議に、WHOCCとして大田が参加した(写真1)。世界中から患者代表の方が集まり、それぞれのストーリーを語りシェアし、患者安全の権利についてグループに分かれ意見を交換した。WHOは、患者安全のためのグローバル知識共有プラットフォーム(Global Knowledges Sharing Platform for Patient Safety :GKPS〈https://www.gkps.net/〉)を立ち上げたことを発表した。ストーリーテリングキットも開発中であり、世界中のベストプラクティスや経験をこのプラットフォームを通して共有していく予定である。

「アジア太平洋患者安全」がウェビナーを開催
 また、「世界患者安全の日」のキャンペーンの一環として、「Asia Pacific Patient Safety :APPS(アジア太平洋患者安全)」は9月14日、WHO西太平洋地域事務局看護技官の芝田おぐさ氏をモデレーターとして、「Engaging Patients for Patient Safety(患者安全のための患者参加)」をテーマにウェビナーを開催した。
 このウェビナーの最初のスピーカーは、シンガポールのSingHealth Duke-NUS Institute for Patient Safety & Qualityのディレクターであるパン・グック・ラン氏であった。パン氏は、「システムの分断」と「強固な安全文化の欠如」を問題視し、KK Women’s and Children’s Hospitalにおける患者安全ネットワーク・プログラムが、「シナジー」「パートナーシップ」「連帯」のコンセプトに基づいて開発されたことを説明した。また、患者とパートナーシップを結び、患者から具体的な安全問題を提起してもらい、それを解決していくプログラムの取り組みについて説明した。2人目のスピーカーは日本のNPO法人「架け橋」の理事長である豊田郁子氏であり、聖路加国際大学WHOCCが作成した英語字幕付きのインタビュービデオが流された。豊田氏は医療事故で5歳の息子を亡くしたことをきっかけに、患者安全の活動家になったことが紹介された。信頼回復や患者の声を反映させるために、医療事故に巻き込まれた患者やその家族と医療従事者との対話を促進する重要性を強調した。また、医療事故が発生した場合、医師や看護師自身も痛みや苦しみを経験していることを認識する必要性にも触れた。3人目の講演者は、タイのThe Healthcare Accreditation InstituteのCEOであるピヤワン・リンパニャラート博士で患者の安全だけでなく「患者と医療従事者の安全」への拡大の必要性を強調した。タイでは、2016年に実施された「患者安全のための全国的な自己評価」の結果、患者の参画/エンパワーメントと医療従事者の安全をはかる重要性が明らかになっている。
(文責:ジェフリー・ハフマン、大田 えりか)

★1World Health Organization. World Patient Safety Day 2023: Engaging patients for patient safety, 2023.(https://www.who.int/news-room/events/detail/2023/09/17/default-calendar/world-patient-safety-day-2023--engaging-patients-for-patient-safety)[2023.11.13確認]

看護 2023年11月号 第75巻 第13号

WHO「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」 障害の有無にかかわらず働く人すべてのメンタルヘルス促進に向けて

働く人のメンタルヘルス
 世界保健機関(WHO)のWorld mental health report(2022)によれば、全世界の就労年齢にある人々の15%がなんらかの精神障害を有し1)、抑うつや不安症状がもたらす生産性の低下は、世界経済に毎年1兆ドルの損失を与えているという2)。わが国でも、労働者の約8割が仕事や職場に関する不安やストレスを抱えているとされ3)、また精神障害の労災補償の請求件数は年々増加し、2022年度は2683件に上っている4)。

WHO「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」
 こうした状況を受け、WHOは昨年、「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」5)を公表した。これは、精神障害の有無にかかわらず、働く人すべてのメンタルヘルス促進のための介入に関する推奨を示したものである。
 推奨事項は、組織への介入、管理者への研修、労働者への研修、個人への介入、精神的不調による休職後の復職支援、精神障害を持つ人の雇用の獲得の6つに分類されている。例えば、組織への介入では、労働者参加型のアプローチをとること、メンタルヘルスの高リスクの者に対しては、業務の負担軽減やスケジュールの柔軟な変更、コミュニケーションの円滑化やチームワークの改善といった組織での取り組みが有用であるとしている。また研修では、不調を感じても精神障害への偏見から援助希求ができない状況が多いことを鑑み、メンタルヘルスに関する正しい知識を提供し、態度・行動の改善をはかっていくこととしている。さらに個人への介入では、働く人すべてに行うストレス対処のスキル向上をはかる普遍的介入に加え、医療や人道支援等の従事者への選択的介入、さらに精神的不調を経験している人々への治療的介入に関しても別途取り上げている。

精神障害を持ちながら働く人への合理的配慮
 精神障害の治療の主軸は、症状を除くことを目的とする臨床的リカバリーから、希望する人生の到達をめざす個人的リカバリー、さらに就労での充足を志向する社会的リカバリーへとシフトしつつある。上述のガイドラインにおいても、精神障害を持ちながら働く人の援助付き雇用や職場での合理的配慮といった社会的リカバリーに向けた介入が取り上げられている5)。わが国でも、2024年4月より、民間事業者においても障害者の合理的配慮が義務化されることとなり、精神障害を持ちながら働く人の社会的リカバリーは今後さらに重視されることが予想される。図表1に、厚生労働省による精神障害を持ちながら働く人への合理的配慮の指針を示した6)。
 今回取り上げたWHOのガイドラインやこうした指針を活用し、障害の有無にかかわらず、すべての人が安心して働くことができるよう努めていくことが求められる。
(文責:青木 裕見)

引用・参考文献

  1. WHO:World mental health report:Transforming mental health for all, 2022.
  2. ILO:ILO/WHO Joint Policy Brief Mental health at work, 2022.
  3. 厚生労働省:令和4年労働安全衛生調査結果の概要, 2023.
  4. 厚生労働省:令和4年度過労死等の労災補償状況, 2023.
  5. WHO:Guidelines on mental health at work, 2022.
  6. 厚生労働省:合理的配慮指針事例集.(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000093954.pdf)[2023.9.24]

看護 2023年9月号 第75巻 第11号

国際助産師連盟国際評議会および第33回3年毎大会(33rd ICM Triennial Congress, Bali, Indonesia)インドネシア・バリに参加して

新会長にSandra Oyarzo Torres氏
 2023年6月7~9日の3日間は国際助産師連盟(以下:ICM)国際評議会が、6月10~14日の4日間は第33回ICM3年毎大会が、インドネシアのバリ島で開催された。3年毎大会には世界の130の国と地域から2600人以上の助産師が集まった。筆者は一般社団法人日本助産学会の国際の代議員として、大阪大学の渡邊浩子国際委員会委員長とともに国際評議会に参加し、院生の学会発表のため3年毎大会にも参加した。
 国際評議会では、年次報告書と予算の採択があり、世界の10地域の理事それぞれから各地域の状況についての説明があった。ICMの戦略(ICM Strategic Priorities 2021-2023)が2023年で終わるため、次期戦略の立案についてグループに分かれて話し合った。
 また、3日目には、新しいICM会長を決めるための選挙が行われた。新しい会長は、今まで副会長を務めていたチリのSandra Oyarzo Torres氏が選ばれた。

印象に残ったウクライナの助産師の語り
 ICM3年毎大会では、4日間にわたって、個人の専門的な能力開発だけでなく、世界中の仲間と交流し、お互いの知見を共有しながらネットワークを広げることができた。ICM3年毎大会は、ICM加盟協会の会員が自国の国旗を掲げながら入場するフラッグセレモニーで開会するのが伝統である。日本の旗手は、2020年に「世界の卓越した女性の看護師・助産師のリーダー100人」に日本人で唯一選出された、広島大学の新福洋子教授が務めた。日本から参加した助産師たちも、日本の旗を持参して応援し、会場を盛り上げた。
 ICM3年毎大会には、助産師の職能団体だけでなく、多くの国際機関も参加しており、国際連合人口基金(UNFPA)なども協賛している。UNFPAの事務局長Natalia Kanem氏は、「2分に1人の割合で、女性や女児が妊娠に関連した合併症によって命を落としている。妊産婦死亡率減少に成功した例もあるが、進展は停滞している。さらに、COVID-19の流行は、貧困の増加や人道危機の悪化と相まって、助産師の重要性をより際立たせている。勇気ある助産師たちは最前線に立ち、最も過酷な状況下で女性たちを守るために命をかけている」と述べた。
 特に印象的だったのは、ウクライナから参加していた助産師の戦時下での体験についての語りであった。彼女は、「私たちは防空壕の中で、妊婦や陣痛中の女性の命を救わなければなりませんでした。助産師になって30年の中で最悪の経験でした」と明かした。彼女と同僚たちは、そのような状況下にあった42日の間に136人の赤ちゃんの誕生を介助した。「赤ちゃんたちの泣き声は、どのシェルターよりも騒がしくて、一番力強い歌声だった。この泣き声は、私たちを立ち上がらせ、動かすものであり、希望の光だった」と語った。
 学会期間中には、口演やポスターの発表への参加だけでなく、待ち時間や軽食を取っている間にも、「どこから参加しているの? 日本の助産はどんな感じ?」と声をかけてもらい、お互いの国の状況を話し合うといった交流を楽しむことができた。このICM3年毎大会での貴重な、さまざまな経験を通して、国や文化を超えて、女性や赤ちゃんのために奮闘できる“助産師”という職業の魅力を再発見することができた。
(文責:大田 えりか、鈴木 瞳)

看護 2023年7月号 第75巻 第9号

タイ国・バンコクのケア施設への支援

高齢化が加速するタイ国

 世界保健機関(WHO)は、世界のあらゆる国において過去にないスピードで高齢化が進んでいることから、
①高齢者に優しい環境
②加齢に対する偏見の撲滅
③高齢者が必要とするケアの統合や長期的ケア整備
などを奨励している1)。
 タイ国は世界で最も高齢化が加速する国の1つである2)。タイ国で急増する脳血管障害においては、救命を目的とする治療を終えると患者は退院し、家族のケアの下で自宅療養することが多い。専門的なリハビリとケアを望む富裕層のタイ人の中には、急性期病院での治療後にケア施設に転院する者もいる。
 筆者は、リハビリに関する経験豊富な日本の医療機関が、タイ国現地のケア施設と提携して、リハビリとケアを提供する施設を訪れ、ケアの向上に関する提言を行ったので報告する。

携帯電話機能による支援とベッドサイドチェックリストの開発

 タイ国の首都バンコクにあるAケア施設は、30床を有し、作業療法士5人、理学療法士12人、理学療法助手7人、介護士13人、看護師1人が勤務している。日本の医療機関が業務提携を行い、日本人理学療法士と日本人看護師が、質の高いリハビリとケアの提供のためにスーパーバイズを行っている。
 この施設に入所している患者の多くは、脳血管障害の既往を持ち、日常生活への支援が必要で、急性期病院入院中に褥瘡をつくった患者も少なくない。褥瘡のケアとカテーテルからの感染予防がケア上の重要課題であったが、介護士は疾病予防に関する知識がほとんどなく、たった1人の看護師は、感染や急変への対応に追われていた。スーパーバイズを担当する現地在住の日本人看護師は、介護士に褥瘡のケアや感染を予防するケアの仕方を細かく指導し、携帯電話機能を使って、介護士、看護師と密に連絡を取ることで、重症化を予防することに成功していた。
 筆者は、Aケア施設の患者、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士に聞き取りを行うとともに、スタッフのケアを観察した結果、介護士がベッドサイドにおける安全確認を実施することで、感染を予防し、患者のクオリティ・オブ・ライフを向上できると考えた。そこで、Aケア施設のスタッフと協働でベッドサイドチェックリストを開発した。
 チェックリストは介護士だけでなく、理学療法士や作業療法士にも共有されている。スタッフ全員が患者の安全と安楽を確認する体制を促進することで、患者の満足度の向上だけでなく、それぞれのサービスの円滑な提供にも資するものと期待される。
(文責:長松 康子)

参考文献

  1. WHO:WHOå’s work on the UN decade of healthy aging(2021-2023).
  2. Economic research institute for ASEAN and East Asia(ERIA):Population aging in Thailand, 2021.

看護 2023年5月号 第75巻 第6号

インドネシア教員によるTeam Based Learningを用いた授業の実装へ

看護・助産学生への授業を通して

 筆者は、日本学術振興会・研究拠点形成事業、アジア・アフリカ学術基盤形成型の事業として、「医療安全を重視した母子保健人材育成グローバルアプローチ研究ネットワーク拡大」(代表:堀内成子)のテーマの中で、「インドネシアの医療系教員への Team Based Learningの導入」に向けて取り組んでいる。
 Team Based Learning (以下:TBL)とは「チーム基盤型学習法」であり、予習、個人テスト、少人数チームでのテストを行い、その内容について教員が適宜フィードバックしていく教授方法である(詳細は本連載2022年1月号、9月号参照)。
 また、本研究はWHO協力センター(WHOCC:WHO Collaborating Centers)の委託条件の1つとして行っており、2022年度はインドネシアにてTBLの実装を行っているため、その概要を紹介する。

〈STEP1〉授業の準備と授業展開案の作成
 聖路加国際大学の博士課程を修了し、現在、特任研究員であるUlfa Yunifit氏が、インドネシアの教員に対してTBLの授業を展開するため、その準備として、2022年11月にインドネシアの看護大学2校に対してセミナーを行った。セミナーは対面形式の3時間程度のもので、大学はHealth Polytechnic KupanとAndalas Universityからそれぞれ教員8名の参加があった。
 セミナー後には、1〜2週間かけて、それぞれの教員がTBLの流れ(iRAT★1/tRAT★2/応用編)に沿った授業内容について作成した。作成した授業展開案については、授業前までに研究者にて確認した。

〈STEP2〉学生への授業展開
 次に、実際に看護・助産学生に対して、それぞれの教員が作成したTBLの授業を行った。2つの大学から、それぞれ47名と74名の学生が参加した。授業については、研究者が立ち会い、TBLの授業がどのように展開されていたのかを確認した。

〈STEP3〉学生と教員への3カ月後のフォローアップ
 学生に対しては、知識の定着度や主体的に学習ができているかについて評価を行った。
 一方、教員に対しては、TBLの授業を継続して行う意欲があるかや、授業展開に当たっての障壁があるかについて評価を行った。

 現在、TBLの授業を実装している途中の段階であるが、研究者の感想として、Yunifit氏は下記の項目を挙げている。

  • インドネシアでTBLを教授法の1つとして適応することが可能であり、今後、教授法として採用する予定である
  • 教員だけでなく、学生においてもTBLの受け入れ状態はよい
  • 少人数でも大人数のグループでも、授業目標に合わせて展開が可能である
  • 事前学習をし、個人とグループにてテストをし、応用編に進んでいくため、基礎知識から応用編まで学生は学ぶことができている

★1 individual Readiness Assurance Test(個人テスト) ★2 team Readiness Assurance Test(少人数チームでのテスト)