教員・専門領域Faculty and Research

在宅看護学

「在宅看護学」ってなに?

教授 山田雅子

教授 山田雅子

 在宅看護学は、訪問看護のことだけを扱うのではありません。
 病気や障害によって暮らしにくさを感じている人が、自分が望む場所で希望や夢に向かって生きていくことを支援するために必要な学問をかき集め、それをその人やその人を取り巻く環境に当てはめて応用し、「その人」と「病気や障害」と「治療」と「暮らし」のバランスを整えていくということを考え続けることを、「在宅看護学」を専門としながら行っているように思います。
 そう考えると在宅看護実践は、患者の自宅で展開される訪問看護はもちろんその一つの方法論として扱いますが、病院の外来、病棟などでの退院支援、高齢者施設での施設内看護など、さまざまな場の中で展開されている看護についても在宅看護の視点で関わることができるわけです。

在宅看護学教室インスタグラム

研究室教員

  • 職名教授/Professor
  • 担当分野在宅看護学
  • 職名講師/Junior Associate Professor
  • 担当分野在宅看護学
  • 職名助教/Assistant Professor
  • 担当分野在宅看護学

教育活動

生涯教育

在宅看護学を担当するメンバーは、看護師の卒後教育にも深く関わっています。大学組織の中では、看護リカレント教育部を兼務しており、以下のような公開講座を展開しています。

  • 訪問看護認定看護師教育課程
  • 認知症看護認定看護師教育課程
  • 認定看護管理者ファーストレベル・プログラム
  • 看護管理塾~看護ものがたり~
  • 在宅療養コーディネーター養成研修と活動支援
  • 新卒訪問看護師の看護技術支援

大学院教育

在宅看護学で扱う、対象者、疾患、場が多様であるため、取り組んでいる研究内容も多彩です。これまでに修了した大学院生の課題研究、修士論文、博士論文、DNPプロジェクト研究のタイトルをご紹介します。
在宅看護学研究室では、院生、修了生、教員が集い、「在宅看護学研究会」を月1回開催しています。そこでの自由な意見交換を通して現役院生の論文作成プロセスを支援しています。

修士論文

修了
年度
論文テーマ
2007 看護師ががん末期患者の退院支援に取り組む動機に関する研究
2007 訪問看護ステーション管理者による、新人訪問看護師に“安心して訪問を任せられるようになるまで”の関り
2013 退院支援看護師の院内院外システム化に向けた役割に関する研究—評価尺度開発の試み—
2015 介護職と協働できる訪問看護師の人材育成に関する研究—訪問看護管理者へのインタビューから—
2016 訪問看護師の心不全増悪ハイリスク療養者に対する疾病管理に関連した看護実践
2017 脳卒中による片麻痺のある独居高齢者が退院後の排泄動作を獲得するまでのプロセス
 

上級実践コース・課題研究

修了
年度
論文テーマ
2010 在宅療養者の摂食・嚥下障害に対するケアの質改善に向けての事例検討
2012 地域医療における倫理的課題に関する事例研究~身寄りのない認知症高齢者への血液透析導入を検討した事例~
2012 退院に向けた意思決定を促す看護実践につての検討~Dream Based Nursingへの挑戦~
2012 両親がさらなる障害を得たわが子との日常生活をとり戻すプロセスとその支援
2013 自宅で暮らす軽度・中等度認知症高齢者と家族に関わる訪問看護師の行動とその意図
2016 医療的ケアを受ける子どもとその養育者が学校生活に対し抱く思いに関する文献レビュー
2016 終末期にある高齢者家族への看護に関する事例研究 スティグマの視点から
2016 終末期がん独居高齢者の在宅療養継続を可能にした家族看護の事例研究
2017 急性期病院の外来看護師による在宅療養支援の在り方についての考察
2018 遷延性意識障害をもつ在宅療養者とその家族に対する在宅看護実践の事例研究
2019 小児病棟における「院内外泊」に関する文献レビュー
2020 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が急性期病院の退院支援に及ぼす影響 ─ 非 COVID-19 患者への支援に焦点をあてて ─
2023 聖路加国際大学大学院上級実践コース3年間の学び-精神障害を持つ人とその       子どもへの訪問看護師の関わりを通して-
2023 高齢在宅療養者に対する残存(起居・歩行)機能維持のために—訪問看護師による予防的リハビリテーションの実際に関する研究
2024 脊髄損傷で排便障害のある患者の排便ケアについての文献検討
2024 「在宅看護の視点」とは何かの探求-研究論文と地域・在宅看護論の教科書を用いた文献検討-
 

博士論文

修了
年度
論文テーマ
2011 認知症高齢者の一人暮らしを援助する訪問看護師の実践
2014 Experience of Ischemic Stroke Patients and Their Family Caregiver in South Tangerang City, Indonesia : Before and After Discharge
2021 漢方医学を学んだ看護師の看護実践の経験
2021 慢性心不全で生きる高齢者の病の経験
2023 訪問看護事業所におけるオンコール対応を行なう看護体制および態勢づくりのマイクロ・エスノグラフィー
 

DNPプロジェクト研究

修了
年度
論文テーマ
2018 A区の訪問看護師のプリセプター育成のための実装研究
2018 都市部大学病院の急性期病棟における退院支援の質改善
2023 小児にも対応できる訪問看護師の育成を目指した『小児版訪問看護OJTプログラム』の実装
 

社会貢献活動

学会活動

一般社団法人日本在宅看護学会の活動を通して、在宅看護の実践と学問が人々の生活を豊かにすることにつながるように活動しています。

People Centered Care事業

院生の声

私は、訪問看護ステーションで約10年看護師、管理者として勤務した後、修士課程から学びを続けています。学びを再開して良かった点はいくつもありますが、在宅看護とは何であるかの整理をできたことは自身の糧となりました。生活を支える看護は、療養者・家族の人生を支えることにつながっているため、課題の解決は一筋縄ではいきません。大学院での学びでは、様々な視点でアセスメントする方法や理論を知ることができました。課題を俯瞰して見つめる態度が身につくと、そこには療養者や家族が病いと闘いながらも保持している夢や強みに出会えます。生活を支える看護には、夢や強みを核として生き生きと生活する人間を支援することなのだと思います。歴史と伝統ある本大学で一緒に学びを深めましょう。

博士課程 立川尚子
 

 

 

博士後期課程に進学し、入学当初から研究したいテーマはあったものの、最初の2年間は自分の臨床経験と研究テーマについて掘り下げ続ける日々でした。1年目は、来る日も来る日も講義でのプレゼンテーションの準備に追われ、学びながら自分の研究の方向がわからなくなったり、考え込んで出口が見えなくなることもたびたびありました。それでも、凝り固まった思考を少し柔らかくし、他の学生とのつながりもでき、大変貴重な時間だったと感じています。3年目ともなると他の学生と会う機会が減り、周りの動きが見えずに不安になることもあります。いつも研究のことが頭から離れないのですが、研究のこと等々、モヤモヤしたものを時に吐き出し合い、研究について語り合える人がいると、少し視界が晴れることもあります。これからもいろんな出会いを大切に、丁寧に研究を進めていきたいと思います。

博士課程 西田志穂