生命倫理学・看護倫理学
生命倫理学・看護倫理学分野では、生命科学とヘルスケアの領域における人間の行為を、道徳的価値と諸原則等に照らして、学際的および体系的に研究します。特に、看護倫理学では、生命倫理学の基盤を踏まえ、看護実践で生じる倫理的課題や看護者の葛藤を明らかにし、倫理的な看護実践およびその基盤を追究していきます。具体的なアプローチをさまざまな専門職や一般市民と協働して提案できる研究者、臨床現場で生命倫理学の基盤やその方法論をもとにして、臨床倫理委員会や倫理コンサルテーションの体制づくり、倫理教育プログラムの構築ができる人材を育成します。
研究室教員
活動紹介
生命倫理学では、生命科学とヘルスケアの領域における人間の行為を、道徳的価値と諸原則等に照らして、学際的および体系的に研究します。看護倫理学では、生命倫理学の基盤を踏まえ、看護実践で生じる倫理的課題や看護者の葛藤を明らかにし、倫理的な看護実践およびその基盤を追究していきます。具体的なアプローチをさまざまな専門職や一般市民と協働して提案できる研究者、臨床現場で生命倫理学の基盤やその方法論をもとにして、臨床倫理委員会や倫理コンサルテーションの体制づくり、倫理教育プログラムの構築ができる人材を育成します。
なお、聖路加国際病院との連携で、聖路加国際病院の臨床倫理員会委員、倫理コンサルテーションの活動も協働しています。
研究活動
- <患者中心の医療や看護の構築に関する研究>
- 医療における本人を主体とした意思決定のあり方の探究
- アドバンスケアプラニングの議論からわが国の患者主体の医療の再考
- <生命倫理・臨床倫理教育の研究>
- 臨床倫理を考える方略としてのナラティヴライティングの研究
- 倫理的視点で話し合える看護師を育成する院内倫理教育プログラムの構築
- <医療職やコメディカルが直面する倫理的課題に関する研究>
- コメディカルおよび介護職が直面する倫理的課題の研究
- ヘルスケア倫理の概念創出:高齢者ケアを担う多職種の倫理的葛藤の対立構造を超えて
- <東アジア地域の生命倫理に関する研究>
- 東アジア地域の高齢期の生きがいに関する研究
- 日本と台湾のヒューマニズムの観点からみたハンセン病回復者の尊厳と人権の回復
- 日台のハンセン病看護に関する研究
教育活動
看護学部、大学院看護学研究科修士課程(修士論文コース)、博士後期課程および、公衆衛生大学院の生命倫理教育を行っています。生命倫理学・看護倫理学の教育を通して、自分の生き方や責任を自律的に考える、一人の人間として、また医療・看護専門職としての倫理的態度を育む、他者の経験や人生に関心をもち、関係性を築く、系統だった推論や論理的な思考を育む、ことを目指しています。
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看護学部1年次 対人関係論、1-2年次 倫理学、2年次 生命倫理 4年 エンドオブライフケア論(一コマ)、看護研究法(一コマ)、周産期看護・ウィメンズヘルス(一コマ)、卒業プロジェクト、(学士)4年次 生命倫理、看護ゼミナール(生命倫理)、総合実習(生命倫理)
学部・学士教育では、生命倫理の諸テーマを通して、自分自身の好み、欲求、考え方の軸になるものを見つめ、問い直していく、つまり「自己を構成する信念や欲求を問い直す力」の育成に力をいれています。また、生命倫理・看護倫理に関連する文学作品、および葛藤を引き起こすような映像教材も活用しながら、文脈や行間を読みとく力を養っています。
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大学院<修士課程>:生命倫理学概論/生命倫理学・看護倫理学特論Ⅰ、看護倫理学概論/生命倫理学・看護倫理学特論Ⅱ、生命倫理学・看護倫理学演習Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、特別看護研究
<博士後期課程>:生命倫理学・看護倫理学演習、特別研究
<公衆衛生大学院>:生命・医療倫理学総論
大学院教育では、一般市民の意思や意向を尊重した保健医療の選択や決定を実現するための支援や仕組み、患者とケアの担い手との関係性、倫理的な看護実践のあり方等を研究し、実践にいかす知を追究しています。倫理学の基盤をふまえ、医療や看護実践で生じる倫理的課題を同定、分析し、具体的なアプローチを多職種で協働して考えることができる人材、医療現場での臨床倫理委員会や倫理コンサルテーション活動へ倫理的観点から積極的に発言し、主体的に活動に参与できる人材の育成を目指しています。
毎年、亀田医療大学の生命倫理研究室と合同ゼミを行い、各大学院生の研究をブラッシュアップする機会を設けています。
社会貢献活動
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学会での活動日本生命倫理学会 理事・評議員
日本看護倫理学会理事・代議員
日本看護倫理学会 編集委員長
日本医学哲学倫理学会 評議員
日本医学哲学倫理学会 編集委員
日本看護科学学会 編集委員 等
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社会活動狭山市民大学 早稲田大学連携 健やかいきがい講座
東京都訪問看護ステーション協会 看護倫理 講師 等
都道府県の看護協会、病院、介護施設、地域での生命倫理や看護倫理の講演・講義、多数
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官公庁等の審議会・各大学・学会等の倫理委員会活動厚生労働省厚生科学審議会 再生医療部会 委員
静岡県立静岡がんセンター企業治験研究倫理審査委員会 委員
早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理審査委員会 委員
日本在宅看護学会 研究倫理委員会 委員 等
過去5年間のテーマ
- 慢性腎臓病患者と医師は腎代替療法選択に向けた話し合いで何を大切にしているか —患者と医師の価値観を探る—
- 患者の意向とチーム規範が対立するPCUの多職種カンファレンスに働きかける看護師の思考とその影響要因
院生の声
- (修士課程大学院生)私はエンドオブライフケアに携わってきました。患者さんがその人らしくいられることを願いながらも、患者さんと患者さんにとって大切な人たち、ときには多職種メンバーも含めた多様な価値が入り交じる中で、立ち尽くしてしまうことも多かったように思います。患者さんの最良を願うとはどういうことか考える力が必要だと思いました。そして、倫理を考えることこそが必要なのだと思いました。入学後の授業では、生命倫理学や看護学の視点で検討する他にも、法学、医学、医療社会学など、様々な領域の方々と対話する機会があります。価値観が異なる人たちと対話し、より良いこたえを導く力を養っていきたいと思います。
- (修士課程大学院生)大学病院で主にがん看護を行ってきました。働いている中で、患者さんの希望や意思を尊重したケアや治療がされているのかどうか、患者さんに向き合う看護師としての姿勢はどうあるべきなのかと悩むことが多くありました。そのため、患者さんのためのケアや医療を患者さんの視点から考えるために生命倫理学・看護倫理学を学ぶことに決め入学しました。
- (修士課程大学院生)私は、透析医療に従事しています。臨床では、日々さまざまな倫理的な違和感やジレンマに遭遇してきました。多くのそのような経験を通して、医療者として、人として、倫理観の大切さと、これらの問題をどう捉え、看護師としてどう向き合い、アプローチすべきかを考えることが重要であると気づきました。また、大学時代から鶴若教授の講義により、私自身の価値観や思想、そして看護観に大きな影響を与えた学びがあり、いつか尊敬する教授の下で学びたい思いもありました。
それらの経緯から、大学院では、具体的に臨床で起こる倫理的課題を捉え、考え、実践に結び付け、ひいては患者の意向や権利を保障していく仕組みを学問的に研究したいと思い、生命倫理学・看護倫理学のコースを志望しました。
- (博士課程大学院生)
修士では医療の場における患者さんと医師の話し合いが、患者さんの価値に沿ったものになるよう研究に取り組んできました。授業やゼミの他に、倫理学以外の専門家の方々から講義を受けたり、研究会にも参加させていただき、たくさんの知見が得られました。さまざまな研究手法についても学んできましたが、さらに学びを深めて、患者さんにとってのより良いケアや医療を倫理学の観点から考えられるよう研究を続けていきたいと思い、博士課程に進学し学んでいます。