精神看護学
Psychiatric and Mental Health Nursing
私たちの研究室では、人々のこころの健康(メンタルヘルス)や、精神疾患をもって生活される方・ご家族のリカバリー(回復)を支えるケアについて探求しています。
リカバリー(回復)とは、希望や夢をもって、その人らしく生活するプロセスです。
それぞれの方がもつストレングス(強み)や、関わる人達、環境のストレングスに目を向け、対象者に寄り添う支援について、研究や実践活動、教育活動を通じて学びあっています。
研究室教員
- 職名助教/Assistant Professor
- 担当分野精神看護学
- 職名助教/Assistant Professor
- 担当分野精神看護学
活動紹介
学部教育ではセルフケアモデルとストレングスモデルを用いた対象者の理解ができる力を、大学院では高い専門性と俯瞰的視野をもつ精神看護専門看護師や研究者の育成を目指しています。
研究活動では、教員・院生共にさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。テーマは「精神科訪問看護の普及や質の向上」「共同意思決定」「ピアサポート」「地域生活支援」「コロナ禍での専門職や市民に対するメンタルヘルス支援」などさまざまです。それぞれの経験や活動を通じて感じた実践上の課題や困難について、ディスカッションをしながら、よりよい実践や研究にむけた活動をしています。
また研究室では、聖路加国際病院訪問看護ステーションからの精神科訪問看護の臨床活動も行っています。自転車での訪問では、地域の雰囲気や文化を肌で感じます。精神障害をもつ方が地域でご自分らしく生活できるよう、どのような支援ができるかを考えています。
研究活動
教員それぞれが科学研究費補助金などを獲得して研究活動を行っています。主な研究には、以下のようなものがあります。
- 精神科訪問看護の実態、ケアの内容、アウトカムについての研究
- コロナ禍におけるメンタルヘルス支援に関する研究
- 精神保健医療福祉の提供体制に関する調査研究
- 大人になって注意欠如・多動症(ADHD)と診断された人への支援に関する研究
- 精神科における共同意思決定 Shared Deicision Making および意思決定支援ツール Decision Aid に関する研究
- 共同意思決定による向精神薬の適正使用・出口戦略に関する研究
- 難治性・治療抵抗性統合失調症の方への訪問看護に関する研究
- 精神疾患により入退院を繰り返されている方が、地域生活を継続するための支援に関する研究
また、研究室では、令和4年度障害者総合福祉推進事業「地域における支援ニーズの高い者に対する精神科訪問看護の実態調査」を行いました。この事業では、子育て中やひきこもりなど、様々なニーズをもつ方への精神科訪問看護の状況と、訪問看護のアウトカムについて調査し、よりよい訪問看護の制度づくりにむけた提案をしています。
教育活動
看護学部では、精神看護およびこころの健康、精神科医療の動向、精神疾患と病態とケア、対人援助職に必要な人や集団の行動の理解や対人関係スキルについて学びます。
講義科目は、メンタルヘルス(2年/3年次編入3年)、精神看護学(3年/3年次編入4年)、看護ゼミナール:精神看護(4年)、卒業研究:精神看護(4年)があります。
実習では、精神科病院と訪問看護で実施する精神看護学実習(3年/3年次編入4年)、地域に
おける精神看護を学ぶ総合実習:精神看護(4年)があります。
大学院修士課程には、修士論文コースおよび上級実践コースがあります。修士論文コースでは、精神看護分野の知識を深めながら研究方法を学び、各自の研究テーマを探求します。上級実践コースでは、精神看護専門看護師を目指して高度な看護実践方法を学びます。
大学院博士課程には、研究者コースとDNP(Doctor of Nursing Practice)コースがあります。研究者コースでは、精神保健医療福祉に関する研究者をめざし、またDNPコースでは特に実践の変革に焦点をあて、各自のテーマを探求し、博士論文に取り組んでいます。
また、研究室では、院生や教員の研究経過報告、看護実践の報告・ディスカッションの場として月1回ゼミを開催しています。仲間がいることは、研究や実践活動を進める上での大きな支えとなっています。
社会貢献活動
- 一般社団法人全国訪問看護事業協会: 「精神科訪問看護研修会」~精神科訪問看護基本療養費算定要件となる研修会~のプログラムのうち事例検討・グループワークを担当しています。
- 臨床研究指導: 千葉県精神科医療センターにて臨床研究をサポートしています。
- 聖路加健康ナビスポット るかなび 専門看護相談:こころの悩み、睡眠の困りごとに関する相談を担当しています。
- 学会における活動: 教員は、関連分野の様々な学会に参加し、地域のNPOなどで役員をつとめています。参加学会等(聖路加看護学会、日本看護科学学会、日本精神保健看護学会、日本社会精神医学会、NPO法人つつじ など)
過去の修士/博士学位 論文テーマ
博士論文
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2023COVID-19パンデミック下で保健所保健師が多職種と協働しながら業務を継続する体験
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2022精神科救急入院料病棟における退院支援のためのトランジショナルケアプロトコルの実装と評価
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2021看護職がボランティアとして長期に被災地に通い続ける体験
~自分の力と向き合うプロセスに焦点を当てて~
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2021通院中断している統合失調症患者に対する支援プロトコル実装の評価
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2020精神科中堅看護師を対象とした「疾患と治療の受け止めが困難な患者への対応」
心理教育プログラムの開発と混合研究法を用いた評価
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2020Development and Feasibility Assessment of a Decision Aid to Facilitate Shared Decision Making for Adults Newly Diagnosed with Attention Deficit Hyperactivity Disorder
修士論文
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2023メンタルヘルス不調により休職する看護師への職場復帰支援-リエゾン精神看護専門看護師の役割を検討する-
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2023妊産婦に対するリエゾン精神看護専門看護師によるメンタルヘルス支援
実習と課題研究で得た学びから妊産婦へのメンタルヘルス支援におけるリエゾン精神看護専門看護師の役割を考える
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2023不登校の経験をもつ人が精神科訪問看護を利用する体験
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2022神経性やせ症患者の心理的要因を捉えた看護介入と看護師を支えるリエゾン精神看護専門看護師としての今後の役割-神経性やせ症患者における文献検討の学びから—
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2021不登校の子どもをもつ母親にとっての精神科訪問看護を利用する体験
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2021ワーク・エンゲイジメントに着目した看護師のメンタルヘルス支援に関する文献検討
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2020身体合併症のある重度精神疾患を持つ人の療養場所の選定に関する文献レビュー
リエゾン精神看護専門看護師の機能についての考察
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2019精神障害者が地域生活支援事業においてピアサポートを行う体験
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2019チーム医療における専門職間コンフリクトの内容と必要な支援
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2018身体疾患を有する統合失調症患者の手術後の意思表示に対する看護師の対応
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2018精神科訪問看護を受けている母親が保育サービスを活用する体験
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2018精神科看護師がストレングスマッピングシートを用いて当事者の夢や関心を知る体験
院生の声
博士前期課程
現在、私は狭義の精神看護専門看護師を目指し、学習に励んでいます。短い期間ではありましたが、精神科単科病院での臨床経験を通じて、疾患の症状や生きづらさを抱える対象者やご家族に寄り添い、強みをいかした支援の重要性を実感しました。そして、自身もそうした支援を行うことできるようになりたいと思うようになりました。また、働くスタッフのメンタルヘルスに関する予防的な支援にも関心があり、大学院に進学致しました。
先生方やゼミの先輩方、同期や仲間などから沢山の学びを頂戴し、また、支えていただき、日々学習を深めることができる環境に感謝の気持ちで一杯です。学びに集中できる今の時間と恵まれた環境をいかして、これからも目標に向かって、一歩一歩進んで参りたいと思います。
2023年度 博士前期課程 上級実践コース入学
清岡 愛佳
私は精神科単科病院での就労の経験はありませんが、救命救急センターで働いていた時に自殺企図をされた方に多く出会いました。その経験から精神看護学を学びたいと思い、大学院に入学しました。現在はまだ学びの途中ですが、精神看護学を通して人間をどのように看るのか、そして自分自身はどのような存在なのかについて深く考えさせられる日々です。また、大学院の学修を通して、現代社会で生きていくために必要な社会のニーズや、その介入方法、社会貢献の仕方についても考える機会となっています。そして、そのような内容を一緒に語り合う先生方、先輩方、同級生にも恵まれ、課題に追われる大変な時もありますが楽しい毎日を過ごしています。
精神看護学領域の修士課程をお考えの方は、ぜひ一緒に学修致しましょう。
2023年度 博士前期課程 上級実践コース入学
田中 しのぶ
私は精神科救急病棟での勤務や退院後生活環境相談員としての活動、訪問看護の経験から、対象者の地域生活を支援する看護に関心を持ち、精神科訪問看護に関する研究を行いたいと考え、修士論文コースに入学致しました。毎週の講義やゼミでディスカッションを行うことで、現象や課題に対して様々な角度で批判的に考える力を養うことが出来ていると実感しております。臨床現場も楽しいのですが、そのような看護実践を支える理論や根拠について考える機会をもつことは、自分の視野を広げ、新たな課題の発見につながると考えております。多忙な大学院生活ですが、先生方のご指導と、相談に乗っていただける環境が積極的な学びの継続につながっています。ぜひ、たくさんの方と経験を共有し、共に学び、研究できることを楽しみにしております。
2023年度 博士前期課程修士論文コース入学
小泉 快
博士後期課程
しばらくぶりに博士課程の学生として再び聖路加に戻ってきました。これまで私は専門看護師を取得し、精神看護専門看護師としてもっとうまくなりたいという思いで、自分の面接技術を磨き、それなりにお金も費やしてきました。それと同時に、組織の中で自分の役割やキャリアが思ったように広がっていかないな、というもどかしさも感じていた中、DNPコースに進学してみようと決めました。成果を研究として出してこなかったことも反省の1つでもあり、進学をきっかけにしたいと思いました。
大学院生活、それも仕事との両立は、なかなか大変ですし、年数が経過してからの進学で、特に知識の面でついていけないこともたくさんありますが、学びたいと思った時が好機だと思っています。そして、先生方をはじめとするゼミの皆様とのつながりがあり、緊張と刺激の中に自分が身を置いていることにワクワクもします。この貴重な時間は、学びだけでなく、さまざまな人との出会いの機会にもなっています。このつながりを大切にしながら、自分の中での成果を出したいと思っています。
2023年度 博士後期課程 DNPコース入学
遠藤 恵美
私は2023年度に博士後期課程に入学いたしました。1年目はコースワークがあり、同級生とのグループワークやディスカッションに多くの刺激を頂きました。また、質的研究と量的研究のエキスパートの先生方からの講義は、今後の財産になると感じています。
精神看護学研究室では定期的なゼミがあり、院生が研究について発表します。このゼミの特徴は、研究者として経験豊富な先生方、臨床や研究・教育者として活躍されている修了生、現役院生から意見を頂けることです。私は、精神疾患をかかえる当事者を対象とした研究を進めています。そのため、研究者としての視点と臨床からの視点を頂けるゼミは大変貴重な機会です。自分一人で研究を進めていると、どうしても視野が狭くなりがちです。ですが、ゼミメンバーの意見に触れることで俯瞰的に自身の研究を捉えられるようになり、暗闇からの出口が見えることがあります。
院生生活を同級生と励まし合いながら過ごせること、キャリア形成のモデルになる先生方や修了生との繋がりが強いことは、聖路加国際大学の強みです。今の環境に感謝し、当事者の皆様の役に立てる研究を考え続けたいと思います。
2023年度 博士後期課程 研究者コース入学
榊 美樹
精神看護学ゼミ
月に1度開催するゼミ@ZOOMの集合写真です。
臨床・教育の場で活躍されている修了生もご参加下さり、研究・実践への示唆をいただいています。