教員・専門領域Faculty and Research

公衆衛生看護学

地域の保健・医療・福祉に関する様々な機関では、住民の暮らしと命をまもるため保健師や看護師などの看護職が365日24時間、包括的・継続的に活動しています。公衆衛生看護の活動の対象は、地域で生活するすべての人々と人々を取り巻く環境です。人々には、その人にとっての安寧(well-being)を保ちながら、各々のコミュニティで安心安全な生活を営む権利があります。

人々の健康には、社会的な要因が複雑に絡み合っている現在、健康を個人やその家族の課題として、専門職が個別に援助するだけでは限界があります。人々の健康を近隣コミュニティや地域社会の課題として、近隣のネットワークや同じ課題をもった人々の集団の力を生かし、住民と専門職が手を組み、命と暮らしをまもるために共に歩んでいくこと、地域社会の未来を見据えた視点が大切です。

聖路加国際大学の公衆衛生看護学教室では、公衆衛生看護の理論を追求し、看護職が社会にどう貢献できるか、学生、大学院生と教員がともに議論し、時代が求める先駆的な教育・研究活動にチャレンジしています。

インフォメーション

・大学院修士課程 公衆衛生看護学上級実践コース(保健師国家試験受験資格取得)は、2025年度で10周年を迎えます。2024年3月までに64名の修了生を輩出しています。

・2024年7月より、大森純子教授が着任しました。

<ひとことご挨拶>

本教室では、公衆衛生看護発祥の地で学び合い高め合う仲間を歓迎します。現場で気になる事象を解明したい方、説明できるようになりたい方、現場の課題を組織として解決したい方、大学院で保健師の国家資格を取得したい方、ぜひ私たちと一緒に公衆衛生看護学の知の集積に貢献しましょう。いつでも相談に応じます。ご連絡お待ちしています。

教室のSNSでは授業や実習、イベントの様子を紹介しています。

研究室教員

  • 職名教授/Professor
  • 担当分野公衆衛生看護学
  • 職名准教授/Associate Professor
  • 担当分野公衆衛生看護学
  • 職名准教授/Associate Professor
  • 担当分野公衆衛生看護学
  • 職名助教/Assistant Professor
  • 担当分野公衆衛生看護学
  • 職名助教/Assistant Professor
  • 担当分野公衆衛生看護学

教室紹介

公衆衛生看護学教室は、大学院生・修了生・教員が共に様々な活動に取り組み、公衆衛生看護学の発展と実践現場への貢献を目指しています。
同じ志をもつ仲間との出会いや研究のプロセスを通して、新しいものの見方や考え方に気づいたり、実践の意味を考えることのできる場となっています。一緒に学びを深めていきましょう。

研究活動

定期的な研究会や国内外の研究者を招いて学習会を実施しています。

地域看護・公衆衛生看護学研究会:大学院生・修了生・教員のメンバーで毎月開催しています。ディスカッションを通して、互いに学び合いながら、研 究の難しさや楽しさを共有したり、多くの新しい発見を得る場となっています。
国内外の研究者の招聘:国内外から研究者を招聘しセミナーを開催しています。各分野の第一人者から指導を受けることで、研究における視野を広げ、学びを深めることにつながっています。
教員の研究:教員ごとのテーマに沿って独自にまたは共同で研究活動に取り組んでいます。詳細は、教員紹介をご覧ください。

教員が取り組んでいる研究テーマ(研究代表課題のみ)
・社会的包摂を志向する保健師活動原理モデルの実装戦略パッケージとエビデンス拠点開発(科研費基盤B 2024-2028年度、研究代表者:大森純子)
・高齢者のペット飼育問題のリスク評価と地域における多機関支援モデルの開発(科研費基盤C 2021-2025年度、研究代表者:小林真朝)
・養護教諭の学校保健の推進にかかわる対処の特定と教育プログラムの開発(科研費基盤C 2020-2024年度、研究代表者:浦口真奈美)
・未就学児育児中の看護師の仕事と家庭の両立支援プログラムの開発と評価(科研費若手研究 2023-2026年度、研究代表者:河本秋子)

教育活動

学部生、大学院生(修士課程・博士課程)への教育を行っています。

【学部】
講義・演習・実習を通して、地域看護(行政保健、産業保健、学校保健、在宅看護など)を幅広く学びます。
科目:地域・在宅看護学、公衆衛生看護学、地域在宅看護学実習、看護ゼミナール(公衆衛生看護学)、卒業プロジェクト 他

【学部(教職課程)】
講義・演習・実習を通して、学校保健について学び、養護教諭1種免許取得を目指します。
科目:学校保健、養護概説、教育相談の理論と実践、教職概論、教育原理、学校における健康支援活動、養護実習、教職実践演習演習 他

【大学院】
<博士前期(修士)課程>
○公衆衛生看護学 修士論文コース
基盤となる理論や研究方法を学び、公衆衛生看護実践の場における課題に取り組むための研究能力の開発を目指します。

○公衆衛生看護学 上級実践コース(保健師国家試験受験資格取得)
本学の建学の精神に基づいた看護専門指導者を広く社会に輩出するため、実践的能力を持ち、なおかつリーダーシップを発揮できる保健師を育成します。
保健師は、人々の健康で幸せな生活を実現するために、地域や職場の複雑で多様な健康課題に取り組んでいく専門職です。本学では、主体的な授業や実習を通して、保健師として必要な知識や技術、専門職としての姿勢を身につけることを目標とします。また、修士論文コースの学生とともに研究方法を学ぶことにより、研究結果を現場に生かす能力と、現場の課題を研究の中で探究する能力を育みます。このような学習環境を通して、保健師活動で直面する答えのない課題に柔軟に取り組み、向き合い続けることができ、さらに現場でのリーダーシップを取れる人材となるように支援します。

○スクールヘルス 修士論文コース(養護教諭専修免許取得)
子どもたちの健康課題やその解決のための方策を、学際的および体系的に学修・研究し、専門性および実践力の高い人材の育成を目指します。

<博士後期課程>
基盤となる理論や研究方法を駆使し、地域看護の実践の場の課題を解決に導くために、自立して研究活動を行う能力や豊かな学識を養うことを目指します。

社会貢献活動

学会役員や講演会・シンポジウム等の活動に積極的に参加しています。また、行政機関等と協働しながら活動を行っています

【過去5年の本教室教員が会長を務めた学術集会開催】
・日本地域看護学会第27回学術集会 メインテーマ「地域看護のソーシャルイノベーション -地域社会の包容力を高める看護の挑戦-」[2024年6月29日(土)・6月30日(日)学術集会長 大森純子]を開催し、盛会のうちに終了しました。
・日本看護倫理学会第16回年次大会 メインテーマ「ソーシャル・ジャスティス~誰ひとり取り残さない社会のために看護職としてできること」[2023年6月3日(土)・6月4日(日)大会長 麻原きよみ]を開催し、盛会のうちに終了しました。

過去の上級実践コース 課題研究のテーマ

【上級実践コース課題研究】

  • 2023年度
    ・保健師による災害平時の多職種連携・協働に関する事例検討 ~市原市災害時保健活動マニュアルの策定と研修会の企画・実施を通して~
    ・メンタルヘルス不調予防を目的とした職場環境改善を促進する要因に関する文献検討
    ・Effectiveness of Using Nudges to Enhance Cancer Screening: A Systematic Review
    ・職場における妊娠や不妊治療のための支援制度構築のプロセスと制度継続に関わる要因~インタビューによる質的研究~
    ・発達障害の疑いを抱える未就学児の家族に対する保健師の関わり
    ・学童の職員が児童対応において抱く困難感
    ・都市部の自主防災組織における活動と運営・維持に関する課題
    ・産後うつ予防における看護介入に関する文献検討 ー日本と海外の支援を比較してー
    ・市区町村保健師が父親の状況を把握する方法と課題
    ・保健師による中高年層のひきこもり支援の現状と課題に関する研究
    ・P区の保健師がインド人妊産婦に対して行う母子保健制度の情報提供に関する支援の現状と課題
    ・メンタルヘルス不調休職者に対する職場復帰支援プログラムを用いた支援の現状
  • 2022年度
    ・新型コロナウイルス感染拡大後の労働者のメンタルヘルスに関する面談の実施状況及び困難感
    ・大学生の月経に対するセルフケアとソーシャルサポートに関する調査
    ・新型コロナウイルス陽性患者対応を継続的に行った看護師に生じた思い
    ・子どもへのワクチン接種をためらう親に対する行政保健師の関わり
    ・放射線専門看護師養成課程を有する大学の看護師課程・保健師課程における放射線教育の在り方の検討
    ・働く女性の月経随伴症状と支援の現状
    ・成人の大麻に対する意識調査—意思決定に関わる要因に着目して—
    ・地域における移住者と地元住民との交流の状況と課題 および行政支援の実際ー移住者、地元住民、行政職員のインタビュー調査より
    ・コロナ禍における知的障害者の生活習慣と肥満の要因
    ・ひきこもり当事者の家族支援の現状と課題に関する文献レビュー
    ・職場における自殺の事後対応に関する産業保健スタッフの認識
    ・母子保健における包括的かつ切れ目のない支援のための信頼関係を構築する保健師の関わり方
    ・職域における労働者への禁煙支援に関する文献レビュー
    ・介護予防を目的とした高齢者自主グループ活動の運営継続に資するリーダーの技術

過去5年間の 修士論文/博士論文テーマ

【修士論文】

  • 2023年度
    予定しない不意の初回面接場面における保健師の支援技術
  • 2023年度
    メンタルヘルスの不調を抱える母親と共に子どもを育てる父親の体験
  • 2022年度
    育児相談において保健師が母親の日常的意思決定を支援するプロセス
  • 2019年度
    自殺未遂者支援のための地域連携システムを構築するプロセス—救命救急センター退院後、地域での支援につなげるための取り組み—

【博士論文】

  • 2023年度
    修正版行政保健師の職業的アイデンティティ尺度作成と関連要因の検討
  • 2023年度
    小学校における教員のための一次救命処置(Basic Life Support)研修プログラムの開発と評価
  • 2021年度
    定年退職後も同一企業で就労を継続する男性の適応とQOLとの関連
  • 2021年度
    歌舞伎俳優の「健康」言説ー産業安全保健との接点を求めてー
  • 2021年度
    住民ボランティアと保健医療福祉従事者による地域づくり活動評価指標の開発
  • 2020年度
    A有料老人ホームにおける“エンディングノート”を用いたAdvance Care Planningプログラム(DNPコース)
  • 2019年度
    未就学児育児中の看護師のワーク・ファミリー・コンフリクトおよびその対処行動とアウトカムの関連
  • 2019年度
    今なお保健師であり続けているということ-重篤な状態あるいは死亡となった児童虐待事例を担当した市区町村保健師の経験-
  • 2019年度
    うつ症状を有する高齢者の包括支援プロジェクト(DNPコース)

院生の声

(上級実践コース)
大学院に入学し、自ら学びを深めていく楽しさを実感しています。専門科目だけではなく、公共哲学などといった様々な側面から公衆衛生を学ぶことができます。こなさなければならない課題も多く大変ですが、親身にご指導くださる先生方や、やる気に満ちた同級生に支えられ勉強しています。また、他の領域の学生とも授業を受けたり、プレゼンテーションを共に行う機会を通して、様々な価値観を知ることができます。短い期間ではありますが、人生の中で貴重な2年間になると思います。

(修士論文コース)
社会人入学で修士論文コース(標準修業年限3年)で学んでいます。公衆衛生看護学の必修科目では開講時間の調整をしていただき、予想していたよりも仕事に支障をきたすことなく履修することができました。また、保健師資格の取得を目指す同級生と学ぶことで初心にかえることができました。現在は研究に取りかかり始めたところで、研究者として新たな知を創造するということについて考えさせられる日々です。実践の中でも研究的思考が求められることはありますが、それとは少し異なる難しさややりがいを感じています。

(博士後期課程)
大学院ではたくさんの学びを得ることができており、学習できる幸せを感じています。ゼミや研究会では他の院生の考え方に触れ刺激を受けることができています。