教員・専門領域Faculty and Research

看護教育学

活動紹介

優れた実践力をもち実践の場に軸足をおく教育者(クリニカル・ナースエデュケーター:CNE)と、優れた研究力をもち教育の場に軸足をおく大学教員を未来の看護系大学教員として育成しています。ゼミでは、様々な文献を読み、経験を話し合い、変容的学習を体験します。また、看護専門職としての資質や能力をいかに育むかを探究し、その成果を学部教育や現任教育に活用しています。
研究テーマは、ファカルティ・ディベロップメントや継続教育、看護師や看護学生の自己調整学習など多岐に亘ります。

研究室教員

  • 職名教授/Professor
  • 担当分野看護教育学
  • 職名准教授/Junior Associate Professor
  • 担当分野看護教育学

活動紹介

聖路加国際大学では、看護系大学で教育を担う未来の看護系教員を育成する、フューチャー・ナースファカルティ育成プログラム(FNFP)を平成25~27年度文部科学省大学改革推進等補助金看護系大学教員養成機能強化事業として採択され、実施しました。看護教育学研究室は、FNFP事業実施の中核を担いました。そして事業と連動し、規定のコースワークの内容に加え、「講義」を行う際に必要な知識やスキルを学ぶ授業、「実習」や「演習」での教育を行う際の知識やスキルを学ぶ授業を実施しました。これら事業成果と、授業の要素を活かして、現在は、看護修士課程で「看護教育学特論Ⅰ」「看護教育学特論Ⅱ」を開講し、教員や臨床の指導者に必要な教育実践力の獲得を支援しております。また、看護学教育に関する研究会を毎月開催し、看護教育学についての探究をしています。

研究活動

文部科学省/厚生労働省科学研究費の助成による最近の研究:

  • 専門職開発力を育成する「看護師の学び方を学ぶプログラム」の効果検証(2015-2019)
  • 助教のキャリア・ラダーとその活用方法の開発(2016-2019)
  • リフレクションシートによる看護教育学実践知の集積と統合(2016-2020)
  • 看護実践能力の向上に寄与する看護教員・実習指導者の養成と継続教育に関する研究(2017-2018)
  • 「ナースのように考える」看護大学生の臨床判断力育成プログラム開発と検証:2群比較(2019~2023)

教育活動

大学院では、博士後期課程と修士課程論文コースの学生に、論文執筆までの支援を行っています。抄読会を開きクリティークしたり、研究テーマについて論じあったりする機会は、多角的な視点から研究テーマを検討できる非常に有意義な学びの場となっています。
また、修士課程上級実践コース(CNEコース)では、臨床に軸足を置く看護系大学教員の育成を目指してカリキュラムを展開しています。
看護系大学での学生の主体的な学びを効果的に支援するために、実践でも専門分野、看護教育における実践能力、学習科学など積極的に学びを進めています。

学部では、看護研究法、看護ゼミナール、総合実習、チームチャレンジ等を担当しています。看護ゼミナールでは、臨床判断能力向上を目指したゼミと、看護教育制度やキャリア開発に関する探究をするゼミの二つを開講しています。学士編入生を対象とした看護ゼミナールは新卒看護師のリアリティーショックに関する研究から開発したものです。学生はシナリオに基づいて複数の模擬患者を受けもち、それぞれに必要なケアを安全安楽に展開します。この演習には、聖路加国際病院のナースマネージャー、教員、CNEコースの学生が教員としてかかわっています。総合実習やチームチャレンジでは、漸次複数の患者を受け持ち、多重課題や時間切迫があるときの優先順位に対する考え方、チームとして働くことなどを、新卒看護師のように病棟のナースと深く交わりながら学びます。  

学部の卒業研究のテーマの例

  • 臨地実習に行った看護学生の学習意欲の変化と指導方法の検討
  • 看護学生のコミュニケーション教育におけるロールプレイの有効性と具体的方法についての文献検討
  • 看護系大学 4 年生の看護職を前向きに希望しない理由とキャリアの展望
  • 日本のナースプラクティショナーの導入を検討するための海外の動向に関する研究
  • 今後、抗がん剤曝露対策を進めていくために必要なものー文献検討とインタビューを通じてー
  • 社会人経験のある看護師のリアリティショックとその支援
  • 認知症高齢者とのコミュニケーションのあり方 ーユマニチュードの視点を用いた事例研究ー
  • Medical technology transforming acute care hospital nursing: A literature review
  • ペア実習における学生と実習指導者が認識するメリット・デメリットについての文献検討
  • 看護師が実施する関節可動域訓練に関する文献検討
  • 夜勤・交代制勤務を行う看護師の生活の現状と勤務が生活に与える影響

社会貢献活動

看護教育学研究室は、フューチャー・ナースファカルティ育成プログラム(FNFP)事業の実施の中核を担いました。
加えて、以下のような活動に、理事や委員等として参画しています。
一般社団法人日本看護学教育学会 理事、委員
財団法人日本看護学教育評価機構 理事、委員
文部科学省高等教育局医学教育課 技術参与

過去の修士/博士学位 論文テーマ

修了年度 論文テーマ
博士論文 2018 新任看護管理者の役割移行モデルの構築
修士論文 2018 看護における概念基盤型学習とその効果に関する文献検討
  対話リフレクションを用いて行う新人看護師への教育的支援—意思疎通の困難な患者の安楽を高めるケア実践に向けてー
  クリニカル・コーチとして教育役割を担う中堅看護師のキャリア発達プロセスの記述
  集中治療室に配属された新卒看護師へのConcept Based Lerningを用いた教育的支援の記述
2017 新人看護師の臨床判断能力養成:概念基盤型学習 Concept-Based Learning による教育的支援
  救急領域における新人看護師の実践能力を育成する教育的支援方法の探求:臨床判断モデルを 用いた省察支援の実践を通して
  対話リフレクションを用いた新人看護師の優先順位の判断のための臨床的思考力育成:午前中の看護実践に焦点を当てた教育的関わり
  リフレクションを通した実施指導者の教育実践力の育成
  夜勤業務における優先順位の判断が必要な場面での新人看護師への教育的支援
  基礎看護学実習における日常生活行動援助実践の教育的支援の構造化
  新人看護師が日常的に廃用症候群予防ケアを提供するための教育的支援
  基礎看護学実習における日常生活行動援助実践の教育的支援の構造化
  現任教育において新人看護師が受けたいじめの体験

院生の声

 私たちは看護の質を向上させるためには、自身が高い実践力をもつだけではなく、教育学的な知識基盤を持つことが必要だと考えています。修士課程では「教える」とは何かということや具体的な教育方法について学びます。講義以外にも、学部生の演習や実習に教育役割をもって関わる、新人看護師や中堅看護師にインタビューを行うなど、様々な形で対象者に教育的に関わる方法や、教育的な課題と向き合う方法を学びます。そして、そこで得た気づきや悩みを院生同士で共有し、意見を出し合い、教員から助言を得ることで、より深い学びにつながっていると感じます。
また、現在は多くのCNEの先輩方が聖路加内外で活躍されており、修士課程修了後の活動の仕方や研究の進め方などについて、研究会や懇親会を通してアドバイスを得られる機会が多くあります。海外から講師を招聘したり、学会等のお手伝いをする機会もあり、人脈を広げるチャンスも沢山あります。私たちと一緒に「教育学的な知識基盤を持った看護専門職」を目指しませんか!

修士課程上級実践コース CNEコース学生一同


私は対象者の「ストレングス」に着目した看護ケアに関心があり、その教授活動について学びを深めるために修士課程に進学しました。先生方の丁寧なご指導と様々な分野で活躍している院生とのディスカッションが大変励みとなっています。
働きながら大学院に通うことは多くの困難がありますが、看護教育に貢献できるよう日々研鑽しています。

(修士課程論文コースR.T)


看護専門職の教育を、基礎教育と継続教育の双方を視野に入れ探究したいと考え、本学看護教育学に進学しました。現在は、研究の焦点化を行っている段階で、自己のリサーチクエスチョンに関する文献検討を行っています。教員や院生間の議論を通して、自己の意見の偏りを批判的に捉えなおす機会となり、思考の修正と、学習を進めることを繰り返しています。
また各々の院生は、教育や臨床のあらゆる機関で就業してい、ます。院生間の交流は、看護教育に関して多角的な視点で知や経験談を共有できる貴重な場です。

(博士課程 M.A)