遺伝看護学
遺伝医療は親から子に伝わるという継承(heredity)だけでなく、多様性(variation)という視点が重要になります。「対象」「場」「時間」の多様性に富む中で、問題・課題に多角的に取り組む領域です。「遺伝」という視点をもって医療・社会を見つめなおすと、看護実践・研究はより深いものになります。高度な専門的知識・技能・研究能力を習得し、確かなエビデンスと豊かな感性をもって遺伝医療を探究します。上級実践コースでは、遺伝医療の対象となる人々が情報を有効に活用して意思決定できるように、遺伝カウンセリング等の実践力向上に必要な知識・技術・態度を学びます。
研究室教員
活動紹介
聖路加国際大学は、日本遺伝看護学会の1999年の開設以来、事務局として学会活動を支え、その学問的基盤の構築に貢献してきました。また、聖路加国際病院遺伝診療部と臨床、教育、研究活動を有機的に行っています。さらに、聖路加国際大学のカリキュラムにおける、ケアの中核的な概念である「People-centered Care」の具現化として、中央区のダウン症候群の家族とのパートナーシップのもと、「ダウン症候群のよりよい成育環境検討会—ポルカの会—」を企画運営しています。
このような道のりを経て遺伝看護学は、2011年に開設されました。
遺伝看護学研究室は、研究と教育と臨床が、有機的につながるように国内外のネットワークを広げる努力を続けています。
研究活動
- 遺伝的課題を持つ人々に対して、その生活世界を理解するための研究。(出生前検査、神経筋疾患、家族性腫瘍等)
- People-centered Careを基盤としたパートナーシップに関する研究。
- 遺伝看護実践能力に関するグローバルスタンダードに関する研究。
- 意思決定支援に関するケアの開発。
- 意思決定支援の効果に関する研究。
- 共有意思決定支援に関する看護職を対象にした教育プログラムの開発と評価
- <研修>
- 国際遺伝看護学会への参加、イギリス プリマス大学大学院遺伝看護領域での研修、
National Institutes of Health (NIH)アメリカ国立衛生研究所 遺伝看護研究活動の研修。
教育活動
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市民向けこどもから成人にいたる生涯を通じた「いでん」に関する教育活動。
意思決定支援ツールの紹介。 -
医療者向け院内教育として看護職への遺伝看護の教育実施。
看護系教育機関 学部への遺伝看護授業の実施。
職能団体(日本看護協会、日本助産師会)の企画する研修会での教育活動
学会での講演活動 日本助産学会、日本難病看護学会、
社会貢献活動
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患者会との共同活動ダウン症候群の親の会との協働講演会の企画実施
神経筋疾患患者会
家族性腫瘍患者会 -
ボランティア患者会からの依頼への対応
過去の修士/博士学位 論文テーマ
修了年度 | 論文テーマ |
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修士 2015 | 家族内での遺伝性腫瘍の遺伝情報共有に関する文献レビュー |
修士 2015 | リスク低減手術を選択した遺伝性乳がん卵巣がん症候群の女性の体験 |
修士 2015 | 出生前検査で偽陽性・偽陰性結果であった親の心理的影響に関する文献レビュー |
修士 2014 | 国内外の遺伝看護実践能力に関する文献レビュー |
修士 2014 | 出生前検査に関する「見通し」を重視したディシジョンガイドの作成と評価 |
修士 2013 | 遺伝リスク情報をめぐる家系内コミュニケーションに関する文献レビュー |
院生の声
- 「助産師としてNICU/GCUで働く中で、先天性疾患をかかえる患者さんとそのご家族に多く会いました。現在の医療現場では遺伝子検査技術は進んでいるものの、それを受ける患者さんやそのご家族へのケアをほとんどされていないことが問題ではないかと感じ、遺伝看護学を学ぶことにしました。」
- 神経・筋疾患の専門病院に看護師として勤務しています。
勤務を続けながら学ぶことができる修士課程の「長期在学コース」で学びました。
有効な予防法や治療法が少ないと言われる遺伝性神経・筋疾患について、当事者やそのご家族に対する遺伝看護について学んでいます。
特に「遺伝の病気の可能性がある」という情報を、どのように家族の中で伝えていくのか、また、その家族のコミュニケーションに対してどのような支援ができるのかについて、探求していきたいと考えています。 - 看護師としてがん専門病院で8年間の臨床経験を経て大学院に進学しました。臨床では遺伝性腫瘍の患者さんにどのような看護を提供したら良いのだろうかと悩み、後輩は更に自分の行っている看護に悩みや不安を感じているのではないかという思いから、遺伝看護上級実践コースの進学を決めました。
大学院では講義以外にも、研究室の勉強会や、セミナー、教授や先輩方の講義に同行させて頂いたりと、学びの場が多くあります。私は今後、家族性腫瘍の患者さんが家族内で情報共有するための支援について考えていきたいと思っています。