急性期看護学
急性期の対象と家族のQOLの維持・向上を目指し、早期回復とその人らしい望ましい生活の獲得への看護を探究します。修士論文コースでは急性期のみならず、健康支援に必要な理論やエビデンスの理解を深め、急性期の健康課題に対する高い研究能力の獲得を目指します。上級実践コースでは、急性期の対象に高度な看護実践を行い、QOLを高める看護実践能力の獲得を目指します。博士後期課程では、健康各期の連続性を見据え、急性期の健康課題への新たな看護支援方法の開発を行っていきます。
研究室教員
- 職名助教/Assistant Professor
活動紹介
急性看護学は、健康各期の連続性から急性期看護を捉える必要性があることから、実践、教育、研究、社会貢献など幅広く活動を行っています。また、急性期看護は治療に伴う専門的な医学的視点や判断に加え、健康問題をもつ対象や家族への生活者としての視点や療養支援について機を逃さず高い次元で統合し実践に結び付ける能力が必要です。これらの能力を高めるために、あらゆる分野との交流を深めながら多角的な視点をもった看護の実践者の育成やケアの検討や開発を行っています。
また、本学の学部生や大学院生のみならず、臨床看護師など急性期看護に関心のある方々にご参加いただき、公開講座の開催を行い、情報共有や研究開発、臨床での活動支援を行っています。臨床看護師、大学院生、教員相互の新たなネットワークの拡大や親睦を図り、プロジェクトチームの作成や学びの支援を行う場になっています。
研究活動
研究活動は、教員それぞれが研究課題をもち科学研究費補助金などを獲得し活発に行っています。主な研究は以下のとおりです。
・慢性心不全発症・増悪予防への地域性を重視した自己管理支援に関する研究
・災害サイクルに応じた心不全予防看護支援に関する研究
・東日本大震災被災者と救援支援者における疲労の適正評価と疾病予防に関する研究
・ユビキタス社会における循環器疾患患者への継続的な自己管理に関する研究
・慢性心不全患者を対象とした心不全看護外来のアウトカム効果に関する研究
・集中治療室から在宅までをシームレスにつなぐ生活機能評価に関する研究
・ICUサバイバーに対するPICSケア看護師教育に関する研究
・周術期にICUへ入室する患者へのアドバンスケアプランニング導入に関する研究
教育活動
学部教育
学部教育は、2~4年次の学生を対象に、成人看護学Ⅰ、急性クリティカルケア論、臨地実習、総合実習を担当しています。主に急性・重症患者看護専門看護師や集中ケア認定看護師の実践や教育経験のある教員が、授業や実習指導を担当し、急性期の対象と家族のQOLの維持・向上を目指し、早期回復とその人らしい望ましい生活の獲得への看護実践ができるよう教育しています。
大学院教育
急性期看護学の修士課程には、急性期看護領域の専門性と研究能力の開発をめざす修士論文コースと急性期看護のスペシャリストとして専門性を深め実践能力を高める上級実践コース(急性・重症患者看護専門看護師育成)の2つを開設しています。
修士論文コースでは、急性期を中心に健康支援に必要な理論やエビデンスの理解を深め、急性期の健康課題に対する高い研究能力の獲得を目指します。上級実践コースでは、急性期の対象に高度な看護実践を行い、QOLを高める看護実践能力の獲得を目指した教育を行っています。
博士課程では、急性期看護領域の高度な能力をもつ看護専門職の育成のため、健康各期の連続性を見据え、急性期の健康課題への新たな看護支援方法の開発や研究能力の向上に向けた教育を行っています。
また、海外での高度看護実践を踏まえた日本における高度看護実践の展開や急性期を中心としたがん医療に関する研究も行っています。(周麻酔期看護学は現在募集しておりません)
社会貢献活動
聖路加健康ナビスポット「るかナビ」や中央区多職種連携かもめケアネットにおいて地域の健康支援活動にも参加しています。
教員の所属学会ならびに学会活動
・日本心臓病学会 理事、男女共同参画WC委員長
・日本心臓リハビリテーション学会 理事、財務委員長
・ジャパンハートクラブ 評議員
・日本循環器予防学会 評議員
・聖路加看護学会 理事、広報委員
・日本災害看護学会 代議員
・日本循環器看護学会 理事長
・日本がんサポーティブケア学会 評議員 国際委員
・日本造血細胞移植学会 広報委員
・日本看護科学学会 代議員、英文誌編集委員、和文誌専任査読委員
・日本がん看護学会
・Sigma Theta Tau International
・Eastern Nursing Research Society
・Oncology Nursing Society
・日本クリティカル看護学会 理事
・日本集中治療医学会 CTG委員会 委員
・日本小児集中治療研究会 理事
過去の修士/博士学位 論文(課題研究)テーマ
修了年度 | 論文テーマ |
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2018 | がん専門病院の集中治療領域においてがんの治療に伴う緊急症により終末期を迎えた患者・家族との関わりで生じる看護師の困難感 |
救命救急センター看護師の意識のある患者への自立促進の視点をもつケアの実際と判断の理由 | |
急性・重症患者看護専門看護師が家族看護に困難を抱いた看護師に行うコンサルテーション | |
周術期等口腔機能管理料の改訂に伴う術前周麻酔科外来での歯科受診と周術期等専門的口腔衛生処置の潜在的需要の変化 | |
成人の末梢静脈穿刺に対する鎮痛リドカイン・プロピトカイン共融混合物製剤(EMLA🄬)の有用性の検討 文献レビュー | |
麻酔機器管理のためのCognitive Aidの段階的開発 | |
周術期プロバイオティクスまたはシンバイオティクス療法が術後感染症合併症に及ぼす効果:文献レビュー | |
2017 | PICS (Post Intensive Care Syndrome ;集中治療後症候群 ) 発症高リスク患者に対する ICU 看護師のケアの実際と認識 |
呼吸ケアチーム活動に対する停滞感の現状と対処 | |
胸部ステントグラフト内挿術を受ける高齢患者の周術期フレイルに対する看護介入プログラムの試行と評価 | |
集中治療室に入室した慢性心不全患者に対する看護師の意思決定支援の現状 | |
心臓血管外科術前看護外来で急性・重症患者看護専門看護師が行うリスクコントロールの為のセルフケア獲得を促進する患者支援 | |
Oxygen Reserve Index(ORiTM からみた健康成人での前酸素化の達成度 | |
術前の不安がプロポフォールの作用に及ぼす影響 文献レビュー | |
2016 | 近赤外線分光法を用いた心臓手術患者の脳酸素飽和度および脳血液量変化 |
集中治療室に再入室を繰り返す慢性心不全患者の心不全と退院後の療養行動に関する認識 | |
人工呼吸器離脱事例に焦点をあてた急性・重症患者看護専門看護師の調整プロセス | |
麻酔科問診票への自由記載欄追加が患者の疑問解消に及ぼした影響 | |
鎮静ガイドライン導入と遵守が消化管内視鏡検査の安全性に及ぼした影響 | |
全身麻酔後の咽頭喉頭痛と咽頭喉頭痛が与える療養生活上の支障に関する実態調査研究 | |
経口挿管全身麻酔患者の口腔内細菌数と口臭の推移 |
大学院生の発表
Research into the activities of Critical Certified Nurse Specialist in Japan (The 38th KSCCM Annual Congress and Acute Critical Care Conference 2019)
院生の声
救命センターで勤務し5年が経過する頃、行っているケアの根拠不足、患者回復へ繋がりの不明確さ、継続ケアの困難性を感じるようになり、患者・家族に質の高い看護を提供する方法を模索するようになりました。また自身の実践能力や教育をする力においても不足を感じ始めていたため、自身の求める役割を担う専門看護師になるため大学院へ進学しました。
急性期上級実践コースでは、特論・演習・ゼミを通して、先生方や院生同士でディスカッションを繰り返す事で、知識だけでなく、論理的思考力、問題解決能力、言語化能力が学べます。また実習を通して、自己課題を見つけ、その課題と向き合うことで実践能力だけでなく、人間性の成長にも繋がると感じています。
長﨑祐士(2017年入学 修士課程 上級実践コース)
私は循環器疾患をもつ人の回復期以降の看護支援について探求しています。看護の対象が急性期病院から在宅へ療養の場を移すときに求められる、看護がつながるためのしくみと支援内容を明らかにし、実現することが目標です。循環器看護に携わる看護師の多くは急性期看護の重要な担い手であることから、急性期看護の視座を理解することが看護をつなぐうえで大切だと考え、急性期看護学でこの分野に取り組むことを決めました。
急性期看護学には、自らの研究領域にとらわれず、自由にディスカッションできる空気があり、英文抄読会や集団ゼミでは毎回発見があります。先生方からいただく個性あふれるご助言は多焦点かつ多面的で、急性期ゼミの大きな魅力です。
菅原亜希(2019年入学 博士後期課程 研究者コース)