基礎看護・看護技術学
基礎看護・看護技術学は、年代や健康課題を限らず、さまざまな看護現象をテーマに研究をしています。看護に共通した効果をデータによって示し、看護学の概念を豊かに醸成することを目指しています。
人々の健康を守り高め、看護の何たるかを言語化し、看護技術を開発、普及するために、医療・保健現場での観察研究や介入研究、また、看護現象を記述する質的研究を行っています。
研究室教員
活動紹介
月1回行っている基礎看護・看護技術学研究会は、院生の研究や教員の研究について相談できる場です。相談を希望するメンバーが、研究テーマや研究方法、データ分析などを発表し、互いに意見を出しあい、より意義のある研究になるように、検討しています。修了生が参加することも歓迎しています。修了生の参加は任意ですが、修了生が集まり、その後研究の進展を発表して、研鑽を深め、研究者の連携をつくる機会にもなっています。
研究活動
教員は各自の関心あるテーマで、科研費を取得して研究を進めています。科研費のテーマは次のものです。①気持ちよさをもたらす看護ケア理論の創成(縄・佐居・樋勝)②行動変容をもたらすパートナーシップに基づく市民主体型便秘改善プログラムの開発(縄・佐居・樋勝・亀田)、③実践知を基盤とした「安楽」をもたらす包括的コンピテンシー・プログラムの開発(佐居)、④緩和ケアを受ける患者が大切な人にメッセージを送ることを促す看護ケアの明確化(樋勝)、⑤外科手術患者を対象とした手術終了直後から実施できるエクササイズプログラムの開発(亀田)、⑥生命の危機的状況にある児と家族の「ふれあい」を促す看護ケアモデルの構築(西本)。
院生は、教員のテーマと一致する場合はともに研究を行いますが、院生は、興味・関心に基づいて研究に取り組んでいるので、下記の表の様にテーマは様々です。研究対象も研究方法も、それぞれ異なりますので、各自が適切な方法を編み出しながら実施しています。
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教育活動
1)修士課程では、特論Ⅰでナイチンゲールの看護覚え書を通読しています。ナイチンゲールの魅力を共に味わい、看護・看護学においてなぜナイチンゲールが原典なのかを改めて学び、看護の本質を問い直し看護実践の価値を再検討します。演習Ⅰでは、各自の問題意識が研究のテーマとして成り立ちえるかを考えます。特論Ⅱでは、各自のテーマに関した論文を読み、テーマの絞り込みをしていきます。演習Ⅱでは具体的な研究対象者・方法を選ぶために演習を行い、研究計画書を書きだします。
2)博士後期課程では、特論で各自のテーマの文献を読み、研究テーマの絞り込みを行い、文献検討あるいは概念分析で論文作成・投稿をおこないます。演習で研究の具体的な可能性を探り,予備研究を実施します。その後研究計画書を作成し、審査を経て、データ収集に取り掛かります。
3)私たちの領域では学部で看護学を導入する科目の教育も担っており、また4年生の卒業前のまとめの科目にも関与しています。これらの科目で、院生がティーチングアシスタントとして活動できます。
4)COVID-19に関連する学部教育の対応として、代替実習の開発や「看護学導入期におけるオンライン実習教材の開発」を行い、臨地実習に行くことができない学生が病棟での体験を疑似体験できるよう、工夫して取り組みを行っています。
社会貢献活動
1)学部生・ナース向けのテキスト・副読本・DVDなどを作成しています。基礎看護技術 看護過程の中で技術を理解する 第3版(南江堂)、ケーススタディ看護形態機能学(南江堂)、看護がみえるvol.1 基礎看護技術(メディックメディア)、看護がみえるvol.2 臨床看護技術(メディックメディア)、日常生活行動からみるヘルスアセスメント(日本看護協会出版)、微生物学・感染看護学(医歯薬出版)、最新基礎看護技術DVDシリーズ(丸善)、などを監修・執筆しています。
2)PCCの実践活動として、一般市民向けの健康相談、便秘ケアプログラムなどを行っています。
3)看護系学会の役員や事務局、東京都、文部科学省、厚生労働省等での委員を務めているメンバーもいます。
日本看護技術学会の「気持ちよい」ケアのハンドブックや便秘症状の緩和のための温罨法Q&Aの作成に関わっています。https://jsnas.jp/guideline/index.html
4)大学院の修了生の多くは大学教員で、北海道から九州までの各地で基礎看護学や成人看護学、老年看護学の教鞭をとっています。臨床で活躍している修了生もいます。
5)COVID-19 感染対策として厚生労働省の感染予防動画「訪問サービスを受ける方のための そうだったのか?感染対策」を作成しました。これは訪問系の介護サービスを受ける方やご家族などが、安心してサービスを受けることができるように、感染対策のポイントを動画にしました。
6)中央区高齢者<通いの場支援事業>にて、区内の一人暮らしや閉じこもりがちな65歳以上の高齢の方などが地域で交流できる場に総合実習を通して参画しています。
過去の修士/博士学位 論文テーマ
修士論文
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2017急性期脳卒中患者に対する口腔ケアの現状と肺炎発症率との関連
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2015ケアの場における患者にとっての「気持ちいい」体験
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2014集中治療領域に焦点を置いた多職種連携によるせん妄対策と導入過程
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2014インシデントを報告することに関する看護職の意識-スタッフナースへのインタビュー
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2013治療期がん患者の生きることへの思いの表出の様相
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2012脳卒中後経鼻胃管から栄養を受ける患者の姿勢の変化
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2012車椅子移乗の介助方法を導くためのアセスメントツールの開発-回復期脳血管障害患者において-
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2011大腸術後患者の早期離床
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2011ラベンダー精油を用いた上肢へのマッサージが自律神経活動に及ぼす影響
博士論文
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2019ジョイント・クライシスプランの支援を通じた統合失調症患者と専門職との相互作用のプロセス
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2017雪国で暮らす高齢癌患者の療養生活
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2017生活行動の視点に基づく消化管術後患者の離床を促進する看護モデルの開発
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2017急性心不全患者における初回立位の可否に関連する要因の探索
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2017治療の終わりに近づいた進行がん患者の経験
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2016点滴スタンド伴う歩行における安全で負担の少ない方向転換方法の検討
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2015乳がん患者のリンパ浮腫のリスクファクターと日常生活への影響
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2014ケアの場における患者にとっての「気持ちいい」体験
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2014乳がん患者のリンパ浮腫のリスクファクタ-と日常生活への影響
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2014闘病記を素材にした現任教育プログラムにおける看護師の体験
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2012中等度-重度認知症高齢者の疼痛アセスメントのための日本語版DOLOPULUS2の有用性
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2012ランダム化比較試験による成人女性の便秘症状とQOLに対する温罨法の効果—便秘薬の服用の有無に焦点をあてて—
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2011後頚部温罨法中の快がもたらす効果モデルの開発
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2011生活者として壮年期・中年期にある女性が入院治療を余儀なくされた際に抱く気がかり
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2011重度アルツハイマー型認知症高齢者との相互作用場面における看護師のケア提供行為の構成—シンボリック相互作用論の視点での検討—
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2011一般病棟熟練看護師が実践する安楽な看護のプロセス
院生の声
- 基礎看護・看護技術学領域では、親身になって指導してくださる先生方、先輩方に支えられながら、研究できる環境が整っています。研究の基礎を身につけながら、自分の関心のあるテーマについても幅広く学ぶことができます。(修士)
- 基礎看護・看護技術学は、自分の関心を大事にして、研究としてどう明らかにしていくことができるかをじっくり考えながら、研究に取り組むことができます。指導教授や先生方、同期の学生との対話を通して、看護の本質と科学を探究していくことができるところが特徴だと思います。(博士)