看護疫学・統計学
統計学は、計量的データを扱う科学的方法論に関する学問であり、計量的データを用いてその集団の特性や状態を表し、そこから問題点を見出したり整理したりすることを目的とする記述統計学(descriptive statistics)と、計量的データを得る集団をある母集団の一標本としてとらえ、標本データから母集団の特性や状態を推定することを目的とする推測統計学(inferential statistics)に大別されます。近代看護学の創始者であるフロレンス・ナイチンゲールは統計学者としても高く評価されている人ですが、ナイチンゲールが用いた統計学は、衛生状態の改善が患者の死亡率を低下させることをデータを用いて明らかにするという記述統計学でした。
また統計学には、臨床医学研究や疫学研究において、研究デザイン・統計解析の方法論を提供する生物統計学Biostatistics)と、さらに数学理論の分野に発展した数理統計学(mathematical statistics)があります。
さて、看護研究の中でも量的研究を実施し、臨床看護・地域看護など様々な看護ケア関連のデータを分析するうえでは、記述統計学・推測統計学そして生物統計学の知識・技術が必須となります。また研究者でなくとも、保健統計資料や量的研究結果を正しく理解し利用するためには、統計学、生物統計学の知識を持つことが重要です。
本研究室では、看護学における統計学、生物統計学の正しい利用と普及を目指して研究、教育活動を行っています。
研究室教員
活動紹介
2012年より年2回、聖路加コクラン塾オープンセミナーを開催しています。
聖路加コクラン塾とは、最もエビデンスレベルが高い研究とされる“システマティック・レビュー”の方法論を開発し、かつ質の高い“システマティック・レビュー”を量産し続けている国際的組織コクラン・コラボレイション(Cochrane Collaboration)の活動を看護分野に紹介・普及すること、また実際にコクラン・コラボレイションに参加することを目的とした活動です。八重が聖路加コクラン塾代表を務めています。
コクラン・コラボレイションは1990年代初頭から始まり、妊娠・出産に関する介入効果を確認するための研究を端緒として、現在ではあらゆる疾患分野に広がっているグローバルな人的ネットワークの活動です。具体的には、ランダム化比較試験を中心に世界中の臨床試験を収集し、質評価を行い、統計学的に統合するというシステマティックレビュー(およびメタアナリシス)を行い、その結果を継続的に、医療関係者、医療政策者、医療消費者に届け、合理的な意思決定に寄与するというものです。またコクラン・コラボレイションは、権威主義によらないこと、真の科学性にもとづいた研究であること、患者参加、を活動方針の中心に置いています。またその活動は120ヵ国におよび、2014年現在で約34,000人が基本的にはボランティアとして参加しています。
本研究室では、本学助産学分野の教員・院生の協力のもと、聖路加コクラン塾オープンセミナーを開催するとともに、八重がシステマティック・レビュー著者としてコクラン妊娠・出産グループの活動に参加し、また2014年に発足したコクラン日本支部(Japan Cochrane Branch)の諮問委員会委員も務めています。
研究活動
コクラン・システマティックレビューおよびその他のシステマティックレビューとメタアナリシスの実施と結果の発信、また聖路加コクラン塾の活動を通して、コクラン・システマティックレビューを実施できるレビューワーの育成に関する研究などを行っています。
教育活動
学部では、情報処理演習を、大学院では、看護統計学特論I、II、III、高等統計学、公衆衛生看護疫学、看護教育学特論III、臨床薬理を担当しています。