2022年度学位授与式 看護学研究科長 祝辞(2023年3月10日)
看護学研究科長 麻原 きよみ
博士課程、修士課程の修了生の皆さん、ご修了おめでとうございます。
コロナ感染症の感染拡大が繰り返す中で、データ収集や実習等に大きな影響があり、ここまでの道のりは平坦ではなかったと思います。しかし皆さんは困難を乗り越え、やり抜きました。皆さんの「何が何でもやり抜く」という強い意志と、「もう一歩踏ん張った」頑張りで、学位を手にできたのだと思います。このことが皆さんの今後の研究や実践の原動力となり、自律して力強く生きていく力になると信じています。
皆さんは、ピタゴラスイッチという幼児番組の「ピタゴラ装置」をご存知でしょうか。小さいボールが、定規や紙コップ、鉛筆など身近なものを使って作られた道をまるで冒険するかのように転がりゴールに達するもので、思いもよらぬ仕組みとその精巧さに驚かされます。そのピタゴラスイッチ監修者の佐藤雅彦氏の「考えの整頓」という雑誌連載記事を集めた本があります。そこにはいくつかのエピソードがあり、例えば、自転車で巡回中のおまわりさんが道を聞かれ、警察帽を脱いで帽子の内側からきれいに畳まれた大きな地図を取り出したこと、真冬の風の強い海岸線を音楽を聴きながらウォーキングしていた時、電池が切れて音楽が聞こえなくなった。その時、ヘッドフォンが耳あてになっていることに気づいたことなど、その意外性に驚き楽しんでいるかのように書かれています。
佐藤氏は本の中で、私たちは物事の意味を捉える時、無意識にある思考的枠組みを使っている。しかし、思いも寄らぬ形で新しい枠組みを与えてくれる体験は、がんじがらめになっている自分の思考の全体を揺さぶり、細やかな錆や埃をはがし落としてくれる。また、私たちが生きていく過程で必要なのは、わかりやすい知識を手っ取り早く獲得することではなく、形になっていない情報をどのくらい自分の力でかみ砕き、吸収していくかであり、それが人間として生き生きとした時間を開拓することにつながるとしています。
皆さんの研究は既存の枠組みではなく、研究者の独自の視点から切り込んで練り上げますし、実践は看護の対象に沿った問題解決やケア改善のために創意工夫します。人々のためを思って、自分の力で新たな道を開拓する取り組みとその姿勢が、研究者や高度実践者としての人間性や生き方になるように思います。
皆さんの未来が、自身にとって納得できる輝かしいものでありますように、心よりお祈り申し上げます。
I'd like to congratulate you all!
You just started your life as a researcher or an advanced practitioner. My best wishes for the glorious success in your future.