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2022年度学位授与式 看護学研究科博士後期課程修了生代表 答礼のことば(2023年3月10日)

看護学研究科博士後期課程修了生代表 浅田美和

日ごとに春の訪れを感じる季節となりました。私たち修了生の気持ちを表すような麗らかな今日この日、皆さまのご列席を賜り、このように盛大な学位授与式を催して頂きましたこと、堀内学長をはじめ諸先生方、職員の皆様に、修了生一同、心より御礼申し上げます。3年前、満開の桜に迎えられ、博士課程への入学式に出席するはずであった 2020年4月、COVID-19のパンデミックの中、国内では緊急事態宣言が発令され、私が勤務する医療機関も非常事態となっていました。入学式はもちろん中止となり、授業開始も延期される中で、いまは臨床での仕事に専念すべき時なのではないだろうか、この状況で研究を進めることができるのだろうかと、博士課程進学への迷いと戸惑いを感じていました。

未知のウイルスに対して、国民が不安と恐怖に陥る中、拠り所となったのは科学的根拠に基づく医学・看護の知見でした。当時、明らかになっている情報は非常に少ないものでしたが、信頼できる情報にアクセスして、国民に正しく普及する、これこそが私たち医療職、そして研究者に求められる姿勢であることを強く実感しました。一方で、科学の力だけでは解決することが困難な社会的課題に直面することにもなりました。倫理的課題を次々と突き付けられる臨床現場では、看護職自身も傷つく経験を伴いました。こうした中で、本学の修了生である諸先輩方が、それぞれの場で、市民や看護職のために、自発的に情報発信を行い、率先して研究を進められていく姿に大変勇気づけられました。微力ながらも、実践家そして研究者として社会に貢献できるようになりたいと、博士課程での研究に取り組んでまいりました。

私は臨床現場で、実装研究に取り組みました。研究がうまくいかない状況に直面した時、打破するためのアイディアは、常に臨床現場の中にありました。臨床でしか得ることのできない知の豊かさや、面白さに改めて気づく経験となりました。今後は、DNP として、アカデミックで得た知見を、臨床看護師にわかりやすく伝え、患者に届けるための橋渡しとしての役割を果たしてまいります。また、パンデミックの影響により、大変な状況にあったにもかかわらず、看護の発展のためにと、惜しむことなく献身的に協力してくださった看護職をはじめとする医療職の方々、そして対象者の皆様には、感謝の念に堪えません。研究の成果を少しでも早く世に送り出し、社会に還元できるよう、努めてまいります。
世界に目を向けると、戦争や自然災害、世界経済の悪化など、私たちは、いまだかつてない困難な課題を抱えています。市民が主体となり、医療者とパートナーを組み、市民やコミュニティの健康問題の解決のために取り組む、本学の「People-Centered Care」の概念に基づき、看護職として自分に何ができるのかを、常に考え、行動していきたいと思います。

博士課程の修了は、実践家・研究者としての自立を意味します。これまで厳しくも温かくお導きくださった先生方からのガイドがなくなることは、大きな不安でもありますが、聖路加国際大学での学びを少しの自信と誇りとして、自らの道を切り拓き、看護学の発展のために邁進してまいります。

COVID-19 による様々な制約がある中、最大限の恵まれた学習環境を常にご提供くださった諸先生方、大学職員の皆様に深く感謝いたします。そして、進学の機会を与えて頂き、応援してくださった職場の皆様や、見守ってくれた家族・友人のおかげで、博士課程での学びを修了することができます。心から御礼申し上げます。

皆様方のご健康と、聖路加国際大学のますますのご発展をお祈りし、答礼のことばといたします。

令和5年3月10日
博士後期課程 修了生代表
看護学専攻 浅田 美和